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彼らは生きていた

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
彼らは生きていた
They Shall Not Grow Old
監督 ピーター・ジャクソン
製作
  • クレア・オルセン
  • ピーター・ジャクソン
製作総指揮
  • ケン・カミンズ
  • テッサ・ロス
編集 ジャベス・オルセン
製作会社 ウィングナット・フィルムズ
配給 イギリスの旗 ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ
日本の旗 アンプラグド
公開 イギリスの旗 2018年10月16日 (LFF)
イギリスの旗 2018年11月9日
日本の旗 2020年1月25日
上映時間
  • 99分 (劇場版)
  • 129分 (拡張版)[1][2]
製作国 ニュージーランドの旗 ニュージーランド
イギリスの旗 イギリス
言語 英語
興行収入 $20,400,000[3][4]
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彼らは生きていた』(かれらはいきていた、They Shall Not Grow Old)は、2018年ニュージーランドイギリスドキュメンタリー映画。監督・脚本はピーター・ジャクソン

概要

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帝国戦争博物館(IWM)が所有する第一次世界大戦の映像を利用して製作され、音源はBBCとIWMが所有する実際に戦闘に参加したイギリス軍人のインタビューが用いられている。映像のほとんどは現代の製作技術で着色化・変換され、さらに効果音と読唇術で解析した会話の音声が追加されて兵士の実体験により近づけられた。

祖父が第一次世界大戦経験者であるジャクソンにとって初のドキュメンタリー映画であり、彼は兵士の体験に没入できるように意図して製作した。スタッフは200人の退役軍人の600時間のインタビューと100時間のフィルム映像を精査して映画を作り上げた。タイトルはローレンス・ビニョンの1914年の詩「戦没者のために」の「残された我々が年をとっても、彼らは年をとらない」("They shall grow not old, as we that are left grow old")から引用されている。

2018年10月16日にロンドン映画祭と英国の一部劇場で同時にプレミア上映され、また休戦から100周年となる2018年11月11日にBBC Twoで放送された。またアメリカ合衆国では12月17日に限定公開され、その興行的成功を受けて翌2019年2月にワーナー・ブラザース配給で拡大公開された[5]。修復作業、没入感のある雰囲気、戦争の描写は評論家から絶賛され、また英国アカデミー賞ドキュメンタリー賞にノミネートされた。

日本ではAmazonプライム・ビデオでの配信やWOWOWでの放映時には『ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド』のタイトルが使われている[6][7]

製作

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2015年、14–18 NOW英語版帝国戦争博物館(IWM)はBBCと共にジャクソンにプロジェクトを委託した[8]。ジャクソンによると映画の製作のためにスタッフたちはBBCの600時間のインタビューとIWMの100時間のオリジナル映像を検証した[9][10]。インタビューは200名の退役軍人たちのものでああり、そのうち120人の音源が映画で使用された[11]。映像を受け取ったジャクソンは従来のようなナレーションを使わず、代わりに戦争の記憶を語る兵士の音声のみを活用して彼ら自身の映画を作ることにした。同じ理由で日付や撮影地の名前はほとんど表示されない方針となった[10]

「これは第一次世界大戦の物語でも歴史的な物語でもなく、完全に正確でさえもないかもしれないが、戦った男たちの記憶であり、彼らは兵士であることがどのようなものであったかについての印象を与えているだけだ」
—プレミアでのピーター・ジャクソン[9]

ジャクソンは「映画を実現するにあたって私たちは兵士を特定しないことに決めた。声が出るたびに画面に名前がポップアップするほど多くの兵士がいた。ある意味でそれは匿名で不可知論的な映画となった。また私たちは日付や場所の参照もすべて削除した。この日やその日についての映画にしたくなかったからだ。その全てについての何百もの本があるのだ。私はこの映画が人間の経験であり、そのように不可知論的であることを望んだ。(中略)私は個人に関する個別の物語は欲しなかった。最終的に120人が1つの物語を語るようにしたかった」と述べた[10]。また別のインタビューで彼は「(兵士たちは)カラーで戦争を目撃しており、確実に白黒ではなかった。私は時間の霧を乗り越えて彼らを現代の世界に引き込み、ヴィンテージのアーカイヴ映画のチャーリー・チャップリン型の人物としてだけでは無く、人間性をもう一度取り戻したかった」と述べた[12]。この映画は第一次大戦でイギリス軍として戦ったジャクソンの父方の祖父のウィリアム・ジャクソン軍曹に捧げられており[13]、ピーターは父と一緒に祖父の戦争の話をして育てられていた[14]。ジャクソンは映画の製作後、「私の父が何を経験したかについての理解が深まった」と語った[12]

ジャクソンは映画製作にあたってギャラを受け取らなかった[8]。完成した映画で使われた映像はほんの一部だったが、ジャクソンのスタッフたちは帝国戦争博物館から受け取った100時間の映像全てを「アーカイヴをより良い形にするため」に復元した[10]

映画はウィングナット・フィルムズがハウス・プロダクションズと共同で製作し、英国国営くじ英語版デジタル・文化・メディア・スポーツ省の支援を受けた[15][16]

音楽

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音楽はデヴィッド・ドナルドソン英語版スティーヴ・ローシュ英語版、ジャネット・ロディックから成るニュージーランドのトリオのプラン9によって作曲された[17]

クロージング・クレジットでは第一次世界大戦中に流行した曲「Mademoiselle from Armentières」の拡張版が流された[18]

公開

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2018年10月16日にロンドン映画祭の特別プレゼンテーション作品としてプレミア上映され、ケンブリッジ公ウィリアム王子が出席した。また英国の一部の映画館でも上映されたほか、国内の学校にも送られた[15][12]。また本編終了後に映画評論家のマーク・カーモードが司会を務めるジャクソンの質疑応答が含まれるサイマル上映も行われた[15]

休戦協定締結から100周年となる2018年11月11日、BBC Twoで放送された[19]。さらに映画の翌日、ドキュメンタリー番組『What Do Artists Do All Day?』のジャクソンの映画製作をとらえた特別エピソードがBBC Fourで放送された[20]

アメリカ合衆国では2018年12月17日と27日にファトム・イベンツ英語版を通して2D及び3D版が特別上映された[21]・ワーナー・ブラザースは2019年1月11日にニューヨーク、ロサンゼルス、ワシントンD.C.での劇場公開を開始した[5]第91回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞には2018年10月1日の提出期限に間に合わなかったために審査の対象外となった。また2018年の映画とみなされたために翌年のアカデミー賞にも参加できなかった[22][23]

日本では当初『ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド』という題でインターネット配信されていたが、2020年1月25日よりアンプラグド配給により『彼らは生きていた』の題で劇場公開が開始された[24]

評価

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興行収入

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アメリカ合衆国とカナダでは1800万ドル、それ以外の国々では250万ドル、全世界で合わせて2040万ドルを売り上げている[4]

アメリカ合衆国では2018年12月17日ファトム・イベンツのプレゼンテーションの一部として上映され、総額230万ドルを売り上げて同社のドキュメンタリーの新記録を作った。また12月27日にアンコール上映が1122館で行われ、2回の上映で340万ドルを売り上げた。これはファトムのドキュメンタリーとしては最高の1日の売り上げであり、また同社のあらゆるプレゼンテーションとしても最高であった[22]。さらにキング牧師記念日に1335館で260万ドルを売り上げた[25]。2019年2月1日には735館で一般上映され、240万ドルを売り上げて10位となった[26]

批評家の反応

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レビュー収集サイトRotten Tomatoesでは148件のレビューに基づいて支持率は99%、平均点は8.72/10となり、「感情的な衝撃が強まる印象的な技術的成果である『彼らは生きていた』は世代の犠牲に素晴らしい映画的トリビュートを捧げる」とまとめられた[27]Metacriticでは26件のレビューに基づいて加重平均値は91/100となった[28]

受賞とノミネート

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部門 候補 結果
英国アカデミー賞[29] ドキュメンタリー賞 ピーター・ジャクソン、クレア・オルセン ノミネート

出典

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  1. ^ They Shall Not Grow Old: Extended Cut on Anzac Day - Peter Jackson's Colorized WW2 Doc Gets 30 Minutes Longer Version”. Movie-Censorship.com (20 April 2019). 25 April 2019閲覧。
  2. ^ Extended version of Peter Jackson's They Shall Not Grow Old released for Anzac Day”. Stuff (9 April 2019). 25 April 2019閲覧。
  3. ^ They Shall Not Grow Old (2018) – Financial Information”. The Numbers. 7 May 2019閲覧。
  4. ^ a b They Shall Not Grow Old (2018)”. Box Office Mojo. 30 October 2019閲覧。
  5. ^ a b Film News Roundup: Peter Jackson’s ‘They Shall Not Grow Old’ Sets Record With $3.4 Million”. Variety (27 December 2018). 29 December 2018閲覧。
  6. ^ ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド(字幕版)を観る”. Prime Video. Amazon.co.jp. 2020年8月10日閲覧。
  7. ^ ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド”. WOWOW. 2020年8月10日閲覧。
  8. ^ a b They Shall Not Grow Old – Special interview with director Peter Jackson”. 3aw (11 November 2018). 12 November 2018閲覧。
  9. ^ a b 'You tried to get me in an ORC suit' Prince William jokes with director Peter Jackson”. Express (16 October 2018). 12 November 2018閲覧。
  10. ^ a b c d Peter Jackson interview: how I made the visually stunning They Shall Not Grow Old”. Flicks (10 November 2018). 12 November 2018閲覧。
  11. ^ Listing of the oral history contributors”. 30 June 2019閲覧。
  12. ^ a b c Prince William attends World Premiere of "They Shall Not Grow Old"”. Royal Central (18 October 2018). 12 November 2018閲覧。
  13. ^ Person profile – William John Jackson”. Imperial War Museum. 30 June 2019閲覧。
  14. ^ "There was no feeling sorry for themselves": Director Peter Jackson on the soldiers of the First World War”. History Extra (7 November 2018). 12 November 2018閲覧。
  15. ^ a b c Peter Jackson They Shall Not Grow Old”. Imperial War Museums. 16 October 2018閲覧。
  16. ^ They Shall Not Grow Old”. 16 October 2018閲覧。
  17. ^ Halligan, Fionnulafa (16 October 2018). “'They Shall Not Grow Old': London Review”. Screen Daily. 14 November 2018閲覧。
  18. ^ Bradshaw, Peter (16 October 2018). “They Shall Not Grow Old review – Peter Jackson's electrifying journey into the first world war trenches”. The Guardian. 16 October 2018閲覧。
  19. ^ BBC Two – They Shall Not Grow Old”. BBC Programmes. 11 November 2018閲覧。
  20. ^ BBC Four – What Do Artists Do All Day? – Peter Jackson”. BBC Programmes. 17 November 2018閲覧。
  21. ^ Fathom Events – They Shall Not Grow Old”. Fathom Events. 17 December 2018閲覧。
  22. ^ a b D'Alessandro, Anthony (27 December 2018). “Peter Jackson's WWI Doc ‘They Shall Not Grow Old’ Sets Brand New Fathom Events B.O. Record With $3M+, $5M+ To Date”. Deadline Hollywood. 27 December 2018閲覧。
  23. ^ Peter Jackson’s WWI Doc 'They Shall Not Grow Old' Breaks Fathom Events B.O. Records With $2.3M”. Deadline Hollywood. 18 December 2018閲覧。
  24. ^ ピーター・ジャクソンが第一次世界大戦の記録映像を修復、着色、3D化したドキュメンタリーが1月公開”. 映画.com (2019年12月12日). 2020年6月26日閲覧。
  25. ^ Film News Roundup: Peter Jackson’s ‘They Shall Not Grow Old’ Pulls in $2.6 Million on MLK Day”. Variety (24 January 2019). 25 January 2019閲覧。
  26. ^ D'Alessandro, Anthony (3 February 2018). “‘Glass’ Still Has Class With Third Weekend Win; ‘Miss Bala’ Fires Blanks In Lowest Super Bowl Frame In 19 Years – Sunday Final”. Deadline Hollywood. 3 February 2019閲覧。
  27. ^ They Shall Not Grow Old (2018)”. Rotten Tomatoes. 7 May 2020閲覧。
  28. ^ They Shall Not Grow Old reviews”. Metacritic. 1 July 2019閲覧。
  29. ^ Film 2019”. 英国映画テレビ芸術アカデミー. 2020年6月22日閲覧。

外部リンク

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