請願駅
請願駅(せいがんえき)は、地方自治体・地元住民・新駅周辺企業などの要望により開設された鉄道駅である[1]。
一般的には建設費の全てまたは大半を、地元の自治体あるいは新駅の周辺に位置する企業が負担するケースがほとんどである[1][2]。鉄道路線網の新たな拡張がほとんど見られない現在、鉄道会社にとって元々駅を設置するつもりのなかった場所に駅を設置するため、その費用は受益者(新駅を利用する住民や企業)が負担するべき、との考え方にのっとって駅建設が行われる[3]。住民にとっては、駅の設置により、駅周辺の利便性の向上や活性化による経済波及効果が期待されるため、建設費を負担しても自分たちの利益にかなう、と考えられるケースが多い。
地方公共団体による支出の是非
編集日本国有鉄道(国鉄)に対する請願の場合、地方財政再建促進特別措置法(1955年施行)に基づく手続きが必要であった。地方財政の再建を旨とする同法は地方公共団体が国家機関に対し寄付金等を支払うことを原則禁止しており、認可されるには所管大臣による承認が条件とされた[5]。
その後、国鉄分割民営化によって国家機関ではなくなったJR各社は同法条項の適用対象外となったが、自治省(現・総務省)は1987年(昭和62年)に「国鉄民営化後の各旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に対する地方公共団体の寄付金等の支出について」(昭和62年3月3日付自治導第十七号)を通達。自治大臣の承認は不要としつつも協議自体は引き続き必要とする見解を示した[5]。
国鉄民営化後この見解に基づき最初に協議されたのは、東海旅客鉄道(JR東海)の金山駅・東海道本線ホーム建設に対する名古屋市の公的資金投入についてであった[5]。
請願駅の例
編集※印は複数路線が乗り入れる駅(既設駅もしくは開業予定の駅)において駅を設置する予定がなかった路線に対して設置を請願したもの。
1950年代以前
編集1896年
1916年
1920年
1923年
- 新富士駅:12月25日。根室本線。
1925年
1927年
1928年
1929年
1931年
1934年
1947年
1949年
1950年代
編集1950年
1951年
1952年
1953年
1954年
1957年
- 東山梨駅[32]:2月5日。中央本線。
- 丹後神崎駅:6月22日。宮津線→北近畿タンゴ鉄道→WILLER TRAINS。
- 南石井駅[33]:8月1日。水郡線。
- 依田駅[34]:12月25日。広尾線。1987年2月2日廃止。
1958年
1960年代
編集1960年
1961年
1962年
1963年
- 滝ノ間駅[44]:4月20日。五能線。
- 平石駅[45]:7月15日。北上線。2022年3月12日廃止。
- 矢美津駅[46]:7月15日。北上線。2022年3月12日廃止。
- 梶田駅[47]:10月1日。福塩線。
1964年
1965年
1966年
1967年
1968年
1969年
1970年代
編集1971年
1979年
1980年代
編集1980年
1981年
1982年
- ユーカリが丘駅:11月1日。京成電鉄。
1983年
1984年
1985年
- 安倍川駅:3月14日。東海道本線。
- 新井口駅[67]:3月14日。山陽本線。
- 新花巻駅[68]:3月14日。東北新幹線・釜石線。
- 西諫早駅[69]:3月14日。長崎本線。
- 水沢江刺駅[68]:3月14日。東北新幹線。
- 館腰駅[70]:4月22日。東北本線。
- すずらんの里駅[71]:10月31日。中央本線。
- 平城山駅[72]:12月1日。関西本線。
1986年
- 錦江駅[73]:3月3日。日豊本線。
- あいの里教育大駅[74]:11月1日。札沼線。
- 猊鼻渓駅[75]:11月1日。大船渡線。
- 西岐阜駅[5]:11月1日。東海道本線。
- 姫川駅[76]:11月1日。大糸線。
- 前平公園駅[77]:12月11日。長良川鉄道。
- 関富岡駅[78]:12月11日。長良川鉄道。
- 刃物会館前駅[79]:12月22日。長良川鉄道。現・せきてらす前駅。
1987年
- ※海老名駅[80]:3月21日。相模線。
- 片浜駅[81]:3月21日。東海道本線。
- 西焼津駅[81]:3月21日。東海道本線。
- 生野屋駅[82]:3月27日。岩徳線。
- 伊勢上野駅[83]:3月27日。伊勢鉄道。
- 大河内駅[82]:3月27日。岩徳線。
- 佐伯区役所前駅[84]:3月27日。広島電鉄。
- 東矢本駅[85]:3月31日。仙石線。
- 鞍手駅[86]:7月1日。筑豊本線。
- 梅山駅[87]:9月21日。長良川鉄道。
1988年
- 逢妻駅[5]:3月13日。東海道本線。
- 青山駅:3月13日。越後線。
- ※掛川駅[88]:3月13日。東海道新幹線。
- 古淵駅:3月13日。横浜線。
- 新尾道駅:3月13日。山陽新幹線。
- 新富士駅[89]:3月13日。東海道新幹線。
- 津軽今別駅[90]:3月13日。海峡線・津軽海峡線。2014年3月15日廃止。
- 西岡崎駅[91]:3月13日。東海道本線。
- 東広島駅[92]:3月13日。山陽新幹線。
- 三河安城駅[89]:3月13日。東海道本線・東海道新幹線。
- 宮内串戸駅:4月3日。山陽本線。
- 玉戸駅:6月20日。水戸線。
- 大和駅:6月20日。水戸線。
- 明峰駅:10月1日。北陸本線→IRいしかわ鉄道。
- 三河塩津駅[5]:11月16日。東海道本線。
- 東照宮駅[93]:11月18日。仙山線。
- 美里駅:12月1日。小海線。
- 小野駅[94]:12月4日。湖西線。
- 北上尾駅:12月17日。高崎線。
1989年
- 太秦駅:3月11日。山陰本線。
- 玉手駅:3月11日。和歌山線。
- 松井山手駅[94]:3月11日。片町線。
- 高尾駅[95]:3月25日。樽見鉄道。
- 高科駅[95]:3月25日。樽見鉄道。
- 水口松尾駅[96]:4月5日。近江鉄道。
- 南が丘駅:4月28日。近畿日本鉄道。
- 池の浦シーサイド駅[97]:7月16日。参宮線(臨時駅)。2020年3月14日廃止。
- 阿品駅:8月11日。山陽本線。
- 中野東駅[98]:8月11日。山陽本線。
- 万石浦駅:4月26日。石巻線。
- 東部市場前駅:11月11日。関西本線。
1990年代
編集1990年
- くりこま高原駅[99]:3月10日。東北新幹線。
- 大学前駅[100]。3月29日。近江鉄道。
- サッポロビール庭園駅[90]:7月1日。千歳線。
- 知内駅[90]:7月1日。海峡線・津軽海峡線。2014年3月15日廃止(信号場降格)。
- 欽明路駅[101]:9月27日。岩徳線。
1991年
- 京セラ前駅[102]:3月16日。近江鉄道。
- 葛岡駅:3月16日。仙山線。
- さつき野駅[103]:3月16日。信越本線。
- 徳田駅[104]:3月16日。伊勢鉄道。
- 栗東駅[105]:3月16日。東海道本線。
- 多摩境駅[106]:4月6日。京王帝都電鉄(現・京王電鉄)。
- 飯沼駅[107]:10月28日。明知鉄道。
- 豊田町駅:12月14日。東海道本線。
1992年
1993年
1994年
1995年
- 尾頭橋駅[111]:3月16日。東海道本線。
- ほしみ駅[90]:3月16日。函館本線。
- 鳥取大学前駅[112]:7月27日。山陰本線。
- 湖遊館新駅駅[113]:10月1日。一畑電気鉄道(現・一畑電車)。
- 井川さくら駅:12月1日。奥羽本線。
1996年
- 鍼灸大学前駅[114]:3月16日。山陰本線。
- 有備館駅:3月16日。陸羽東線。
- 東雲駅[115]:3月30日。東京臨海高速鉄道。
- 村上駅[116]:4月27日。東葉高速鉄道。
- 船橋日大前駅[116]:4月27日。東葉高速鉄道。
- 東尾道駅:7月21日。山陽本線。
- 緑が丘駅:9月1日。富良野線。
- 甲南山手駅:10月1日。東海道本線。
1997年
- JR藤森駅:3月8日。奈良線。
- 板倉東洋大前駅:3月25日。東武鉄道。
- 八王子みなみ野駅:4月1日。横浜線。
- あきた白神駅:10月1日。五能線。
- 今井駅:10月1日。信越本線。
- ※佐久平駅[117]:10月1日。小海線。
1998年
- 紫波中央駅[118]:3月14日。東北本線。
- ※東松戸駅[119]:3月14日。武蔵野線。
- ひたち野うしく駅:3月14日。常磐線。
- JA広島病院前駅[120]:9月1日。広島電鉄。
- 東静岡駅:10月30日。東海道本線。
1999年
2000年代
編集2000年
2001年
2002年
2004年
- 河辺の森駅[102]:3月13日。近江鉄道。
- 小鶴新田駅:3月13日。仙石線。
- JR五位堂駅[126]:3月13日。和歌山線。
- 本庄早稲田駅[89]:3月13日。上越新幹線。
- 高崎問屋町駅[127]:10月16日。上越線。
- 都留文科大学前駅:11月16日。富士急行。
2005年
- 愛環梅坪駅[128]:3月1日。愛知環状鉄道。
- 内野西が丘駅:3月1日。越後線。
- 貝津駅[128]:3月1日。愛知環状鉄道。
- たのうら御立岬公園駅:3月1日。肥薩おれんじ鉄道。
- ひめじ別所駅:3月1日。山陽本線。
- ※流山おおたかの森駅[129]:8月24日。東武鉄道。
- 万博記念公園駅:8月24日。つくばエクスプレス。
- 北長瀬駅:10月1日。山陽本線。
2006年
2007年
- 太子堂駅:3月18日。東北本線。
- 東北福祉大前駅:3月18日。仙山線。
- 野田新町駅[132]:3月18日。東海道本線。
- 平田駅:3月18日。篠ノ井線。
- 日華化学前駅[133]:9月1日。えちぜん鉄道。
- 八ツ島駅[133]:9月1日。えちぜん鉄道。
2008年
- 梶栗郷台地駅:3月15日。山陰本線。
- 越谷レイクタウン駅:3月15日。武蔵野線。
- 島本駅:3月15日。東海道本線。
- スクリーン駅[134]:3月15日。近江鉄道。
- 西川原駅:3月15日。山陽本線。
- はりま勝原駅:3月15日。山陽本線。
- 和木駅:3月15日。山陽本線。
- 南桜井駅[135]:6月29日。名古屋鉄道。
- 極楽駅[136]:12月25日。明知鉄道。
2009年
2010年代
編集2010年
2011年
2012年
2014年
2015年
- 新黒部駅[140]:2月26日。富山地方鉄道。
- 天童南駅[141]:3月14日。奥羽本線。
- 陽羽里駅[142]:3月14日。北陸鉄道。
- 森町病院前駅[143]:3月14日。天竜浜名湖鉄道。
- まつもと町屋駅[144]:9月27日。えちぜん鉄道。
2016年
2017年
2018年
2019年
2020年代
編集2020年
2021年
2022年
2023年
2024年
請願中
編集鉄道事業者に請願中または、請願が承認されて建設中の駅を記す(戦略的新駅については別項を参照)。各活動の進行度が異なるため、おおまかなステータスを併記する。
- 貝塚新駅:鹿児島本線。九大跡地利用4校区協議会が駅設置を請願[162]。2027年開業予定[162]。
- 上所駅:越後線。新潟市などが駅設置を請願[163]。
- 蒲生新駅:近江鉄道。東近江市が蒲生医療センターがん診療棟のアクセス駅として請願[164]。
- 仙巌園駅:日豊本線。2021年3月31日付で磯新駅設置協議会と覚書を交換[165]。2024年度に開業予定[165]。
- 豊岡新駅:信越本線。高崎市が駅設置を請願。2023年3月27日にJR東日本高崎支社と高崎市が基本協定を締結した。周辺道路の整備などを含め、開業は2026年度を予定している[166]。
- 船橋新駅:東葉高速鉄道。
- 北海道ボールパーク駅:千歳線。北広島市が駅設置を請願[167]、駅設置が決定した。2028年度に開業予定[168]。
断念
編集- 大足駅[169]:名古屋鉄道。
- 新千曲駅[170]:北陸新幹線。
- 白山駅[171]:北陸新幹線。
- みなみ北本駅[172]:高崎線。
- 南びわ湖駅[89]:東海道新幹線。
- 名称未定(桜木駅 - 西掛川駅間)[173]:天竜浜名湖鉄道。
類例
編集戦略的新駅については別項を参照
- ※金山駅:1989年7月9日。- 東海道本線。金山総合駅構想における東海道本線ホーム設置について、国鉄と名古屋市とで認識が異なり、請願駅として名古屋市に全負担を求める国鉄に対し、名古屋市は「名古屋市から新駅設置を請願したことはない」として、国鉄負担を求め続けていた。この対立はJR東海に引き継がれるが、世界デザイン博覧会の開催に間に合わせるという命題の下で妥協が成立。大部分が名古屋市負担としつつ、一部のみJR東海が負担する形で決着した。そのため名目上は「純粋な請願駅」ではないことになっているが、名古屋市からの支出について先述した自治省に対する協議が求められるなど、請願駅の場合と同様の手続きが取られている[5]。
- 名寄高校駅:2022年3月12日移設。宗谷本線。 - 手続き上は請願駅ではなく東風連駅を移転・改称したものであるが、旧東風連駅からは1.5kmも離れており実質的には新駅の設置に相当すること、また移転に際しては2019年(平成31年・令和元年)に名寄市から名寄高校付近に駅を移設するよう請願があり、事業経費を名寄市が負担[174][175]し、かつ駅施設一式も名寄市の資産となっていることを勘案すると、事実上の請願駅である。
戦略的新駅
編集戦略的新駅は東日本旅客鉄道(JR東日本)が提唱している新駅建設スキームの一形態で、沿線自治体と包括連携協定を結ぶことで鉄道側が積極的にまちづくりに関与し、迅速な駅開業を目指すものである。一般的な請願駅と異なり、この形態を取る新駅は自治体からの一方的な請願ではないため、鉄道会社側も一定の建設費用を負担することになる[176] 。
JR東日本がこのスキームにより開業させた最初の駅は小田栄駅である[177]。以後、JR東日本の沿線では駅の誘致において自治体側がこのスキームによる開業を目指す事例も出てきている[178]。
戦略的新駅として開業した駅
- 小田栄駅[177]:2016年3月26日。南武線。
- あしかがフラワーパーク駅[179]:2018年4月1日。両毛線。
戦略的新駅として構想中の駅
脚注
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- ^ "第4章 旅客交通体系の整備 第1節 幹線交通網の整備". 昭和61年度運輸白書. 国土交通省. 1 December 1986. 2020年7月10日閲覧。
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- ^ “なぜ府中町に向洋駅”. 府中町. 2024年4月1日閲覧。
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- ^ 『蒲郡市史 本文編3 近代編・民族編』、278頁
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関連項目
編集- 鉄道と政治
- 日本の鉄道史
- 整備新幹線 - 国や地方公共団体の公費投入による新幹線の建設
- 開発インターチェンジ/地域活性化インターチェンジ/追加インターチェンジ - 地方公共団体等の公費投入によって建設される高速道路のインターチェンジ