OPS-12
「くらま」(51DDH)の搭載機 | |
種別 | 3次元レーダー |
---|---|
目的 | 対空捜索 |
開発・運用史 | |
開発国 | 日本 |
就役年 | 1980年(昭和55年) |
送信機 | |
形式 | 電子管 |
周波数 | Sバンド |
アンテナ | |
形式 | パッシブ・フェーズドアレイ方式[1] |
方位角 | 全周旋回無制限 |
探知性能 | |
探知距離 | 119 km (64 nmi)[2] |
OPS-12は、日本電気(NEC)製の3次元レーダー(フェーズドアレイレーダー)。海上自衛隊のしらね型護衛艦(50/51DDH)において、艦載対空捜索レーダーとして搭載された[3][4]。
来歴
[編集]海上自衛隊では、初のミサイル護衛艦である「あまつかぜ」(35DDG)に搭載されたAN/SPS-39より3次元レーダーの運用を開始した。しかし一方で、はるな型護衛艦(43/45DDH)では2次元レーダーしか搭載されていなかった。このことから、はるな型の拡大改良型としてのヘリコプター護衛艦(DDH)向けの国産3次元レーダーとして開発されたのが本機種である。なお本機種の開発に当たっては、AN/SPS-39の開発元であり、自動警戒管制組織(BADGE)で日本電気とも密接な関係があったヒューズ社に技術料が支払われていたとも言われている[1]。
設計
[編集]本機は、航空自衛隊向けのJ/TPS-100で開発された技術を利用して製作された[5]。俯仰角方向は電子的に、旋回角方向は機械的に走査されるが[4]、この電子的なビーム走査の方式としては、AN/SPS-39では周波数走査(frequency scanning, FRESCAN)方式を用いていたのに対し[注 1]、本機では位相走査(phase scanning)方式を採用し[7]、パッシブ・フェーズドアレイ・アンテナとなった[1]。このアンテナは18度傾けて設置されており、下部には敵味方識別装置(IFF)のアンテナが設けられている[4]。
レーダー送信管は水冷式で[8]、高出力電子管による3段直列増幅方式が採用されており、AN/SPS-39とは比べ物にならないほどの大出力であった[7]。このため、港内あるいは陸地に近いところではフルパワーでの送信が禁じられていたが、本機種の送信管では、最終段を送信しなくても2段目までの出力で運用できるように工夫されており、港内で送信しなければならない場合などに活用された[7]。ただしあまりの大出力のために、メインローブだけでなくサイドローブによる信号も表示されてしまい、公試中に大島が2つ現れる事象が発生したことがあり、サイドローブによる受信信号を抑制する対策が行われた[7]。なお信号処理部にはAN/UYK-20電子計算機が用いられており[9]、パルス圧縮の技術も導入された[4]。
運用史
[編集]性能面では、たちかぜ型護衛艦で搭載されたAN/SPS-52Bと同等であったことから、同型3番艦「さわかぜ」(53DDG)では本機の搭載も検討され、予算要求されて執行計画も作成された[5]。しかしターター・システムとの連接条件が不明な点があるなどの理由で、結局は断念され、同艦およびはたかぜ型護衛艦(56/58DDG)ではFMS調達したAN/SPS-52Cが搭載された[5]。これにより、本機の搭載はしらね型護衛艦(50/51DDH)の2隻のみとなっており、その生産終了の背景にはヒューズ社からの圧力があったとも言われている[1]。
その後1990年(平成2年)に就役した「はまぎり」(60DD)より、汎用護衛艦(DD)向けの国産艦載3次元レーダーとして、アクティブ・フェーズドアレイ・アンテナを用いた三菱電機製のOPS-24が就役を開始した[1]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]参考文献
[編集]- Friedman, Norman (1997), The Naval Institute Guide to World Naval Weapon Systems 1997-1998, Naval Institute Press, ISBN 9781557502681
- Streetly, Martin (2005), Jane's Radar and Electronic Warfare Systems (17th ed.), Janes Information Group, ISBN 978-0710627049
- 朝雲新聞社 編『自衛隊装備年鑑 2011-2012』朝雲新聞社、2011年。ISBN 978-4750910321。
- 窪田満「国産初号機OPS-12レーダとの付き合い-一電子整備員の「しらね」物語」『第5巻 船務・航海』 第1分冊、水交会〈海上自衛隊 苦心の足跡〉、2014年、247-250頁。
- 航空幕僚監部 編『航空自衛隊50年史 : 美しき大空とともに』2006年。 NCID BA77547615。
- 佐藤義明「海自水上艦艇用レーダの開発・導入の軌跡」『第5巻 船務・航海』 第1分冊、水交会〈海上自衛隊 苦心の足跡〉、2014年、226-233頁。
- 藤木平八郎「艦載レーダー発達の歴史 (特集 最近の艦載レーダー)」『世界の艦船』第607号、海人社、69-76頁、2003年2月。 NAID 40005630579。
- 藤木平八郎「海上自衛隊の兵器開発システムの問題点 (特集 海上自衛隊の艦載兵器)」『世界の艦船』第721号、海人社、106-109頁、2010年3月。 NAID 40016963810。
- 保坂俊彦「「しらね」船務科所掌電子機器のぎ装、戦力化の思い出」『第5巻 船務・航海』 第1分冊、水交会〈海上自衛隊 苦心の足跡〉、2014年、127-130頁。
- 山田道雄「海自初のNTDS艦「しらね」の就役-システム艦CIC活動の変遷」『第5巻 船務・航海』 第1分冊、水交会〈海上自衛隊 苦心の足跡〉、2014年、115-121頁。
関連項目
[編集]ウィキメディア・コモンズには、OPS-12に関するカテゴリがあります。