リーヴ
リーヴ(古ノルド語: Líf、またはLif、「生命」の意[1])は、北欧神話に登場する人物の名前で、ラグナロク(世界の破滅)の後、再び人類をふやすように定められた人間の男女一組[2]のうちの一人[3][4]。もう一人の生き残りリーヴスラシル(古ノルド語: Lífþrasir、またはLifthrasir「生命力自らを維持する者」の意[1])といい、この二人がラグナロク後の世界の人類の祖となったとされる[3][4]。
二人の性別について
[編集]資料によって、二人の性別が異なっている。例えば「北欧のロマンゲルマン神話」ではリーヴを男性、リーヴスラシルを女性としているが[5]、またP271ではリーヴとリーヴスラシルという男女という記述もされている。一方でサイトによっては、明示的に性別を逆に記述しているものもある[1]、また英語版Wikipediaではリーヴスラシルはlífとþrasirに由来する古ノルド語の男性名と記載されている等性別の解釈が錯綜していると言える。この事から、原語の原本での記述で、両者の性別が明確に区別されていない可能性もある。
ラグナロクと二人
[編集]『古エッダ』の『ヴァフスルーズニルの言葉』第45節および『スノッリのエッダ』第一部『ギュルヴィたぶらかし』第53章によると、ラグナロクによって世界が崩壊し、フィンブルの冬が襲ってきて、スルトの放った炎が世界中を包んでいる間、二人はホッドミミルの森(en)にかくまわれていた。 二人は朝露を飲みながら生き延びた[3][4]。
ラグナロクの後
[編集]大地が海から姿を現し、破壊と崩壊からよみがえった世界では、リーヴとリーヴスラシルの他に、神々の子(オーディンの子、ヴィーザル)など新たな世界に君臨する神も生き残った[3][6]。 この神の子らは死者の国から帰還したバルドルと出会うと言われている[4]。
関連項目
[編集]世界の崩壊後に生き残った者が新たな人間の始祖となるという内容の神話は、他にも見られる類型である。
- 旧約聖書の『創世記』における、ノアの方舟。
- ゾロアスター教の聖典『アヴェスター』における、マシュヤグとマシュヤーナグ。
- ペルシアの文献『ヴェンディダード』における、ワラ(巨大な洞窟)についての神話。[7]
脚注
[編集]- ^ a b 『エッダ 古代北欧歌謡集』50頁。
- ^ 菅原、p.298。
- ^ a b c d 『エッダ 古代北欧歌謡集』49頁。
- ^ a b c d 『エッダ 古代北欧歌謡集』280頁。
- ^ 北欧のロマンゲルマン神話 ISBN 9784469244199 P318など
- ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』279-280頁。
- ^ 『ペルシア神話』p.78-79。古代ペルシアのイマ(『ヴェーダ』におけるヤマだが性格は異なる。また後期の文献ではジャムシード)は、創造主から、あらゆる人間と動物を死滅させる恐ろしい冬についての警告を受けたため、ワラ(巨大な洞窟)をつくって、あらゆる家畜と植物、そして最近の人間の種子をかくまい、その恐怖が静まった後にまた世界が繁栄するようにしたとの旨が記載されている。
参考文献
[編集]- V.G.ネッケル他編『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、1973年、ISBN 978-4-10-313701-6。
- 菅原邦城 『北欧神話』東京書籍、1984年、ISBN 978-4487750474。
- ジョン・R・ヒネルズ 『ペルシア神話』 井本英一+奥西峻介訳、青土社、年、ISBN 4-7917-5272-4。