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スマ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
スマ属から転送)
スマ
FishBaseによる図解
Euthynnus affinis(FishBaseによる図解)
生体標本(ジャカルタ産
生体標本(ジャカルタ産)
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes[1]
: サバ科 Scombridae
: スマ属 Euthynnus
Kishinouye, 1920
: スマ E. affinis
学名
Euthynnus affinis
Cantor, 1849
シノニム
  • Thynnus affinis Cantor, 1849[2]
  • Euthunnus yaito Kishinouye, 1915;
  • Wanderer wallisi Whitley, 1937;
  • Euthunnus affinis affinis Fraser-Brunner, 1949;
  • Euthunnus affinis yaito Fraser-Brunner, 1949;
  • Euthunnus alletteratus affinis Beaufort, 1951;
  • Euthunnus wallisi Whitley, 1964.[3]
和名
スマ(須萬)
英名
Kawakawa
Mackerel tuna
etc.[1]
本文参照

スマ(須萬、須万、学名Euthynnus affinis)は、スズキ目サバ亜目サバ科スマ属に分類される海洋生条鰭類の1およびその一種。インド太平洋インド洋太平洋)の温帯亜熱帯熱帯域に広く分布する大型肉食で食用にされる[4]

呼称

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学名ラテン語名)のうち、属名の由来は、ギリシャ語による合成語「eu(=good、良)+thynnos(=tuna、マグロ)」である[3]

日本語の標準名「スマ」は「鰹の縦縞に対して『横縞鰹』の意味で『シマガツオ』と呼ばれていたものが『スマガツオ』に変化した」ことが由来である[5][4]

地方名としては、ワタナベ(千葉県)、スマガツオ(東京都)、キュウテン(八丈島)、ホシガツオ(高知県)、ヤイト・ヤイトガツオ(西日本各地)、ヤイトマス(和歌山県)、ヤイトバラ(近畿地方)、オボソ(愛媛県愛南町)、ウブシュ(宮古島[6][7]などがある。「ヤイト」の異称は胸鰭下方の腹部に複数ある黒斑を灸の痕に見立てたものである[8]

英語名は、Kawakawa、Kawa kawa、Black skipjack、Black skipjack tuna、Eastern little tuna、Island skipjack、Little tuna、Little tunny、Mackerel tuna、その他多数が存在する[3][1]

中国語では「巴鰹」(バージエン)と称する。台湾語では「煙仔魚」(イエナヒー)、「三點仔」(サムディアマー)などと称する[9]

分布

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インド太平洋インド洋太平洋)の温帯 - 熱帯にかけた海域に分布する[4]日本では相模湾 - 屋久島の太平洋沿岸、兵庫県日本海側 - 九州南岸の日本海・東シナ海沿岸および琉球列島沿岸に分布する[4]

特徴

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成魚は最大で全長100センチメートル(cm)を超え[8]、体重10キログラム(kg)に達するが[10]、日本で主に見かける個体は50cm - 60cm程度である[11]。体型はカツオなどと同様の紡錘形では眼の後部・胸鰭周辺・側線周辺にしかない[11]。背部は明灰色の部分に斜めに走る縞があり、これが横縞に見立てられたことが前述の和名の語源と考えられる[4]

「ヤイト」の異称の通り胸鰭の下に数個の黒い斑点があることが特徴だが、その数・濃淡には個体差がありほとんど見えないものもあるほか、大型個体では斑点が小さくなる[8]

幼魚は黒っぽい横帯模様が約12条ある[11]。他の類似種にはソウダガツオ類(マルソウダ・ヒラソウダ)・ハガツオなどがいるが、スマの成魚はこれらより体高が高い。

生態

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カツオほどの大群は作らず単独か小さな群れで回遊し、南西諸島小笠原諸島沿岸では通年釣れるが、本州太平洋岸では8月 - 10月と釣期が限られる[12]相模湾駿河湾ではソウダガツオ類の群れの中から稀に釣れる程度で、まとまって漁獲されないことから沿岸の表層をカツオソウダガツオ類・ハガツオなどほかのカツオ類に混じって回遊していると考えられている[8]

産卵期は日本沿岸では夏だが南方ほど長くなり、北赤道海流沿いでは冬期を除く8か月にわたり産卵する[12]。特定の産卵場は持たず水面に浮く径1.5mmの受精卵を産卵し、餌が乏しい外洋域にて約1日で孵化した仔稚魚一緒に生まれた兄弟を共食いする[12]

寿命は約6年で成長が速く、満1歳で1kgに育ち満2歳で成熟する[12]。カツオの仲間としては沿岸性が強く島嶼部では磯際まで回遊する[12]

食性は肉食性で[12]、魚・甲殻類頭足類などを捕食する。

分類

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近縁種
タイセイヨウヤイト[13] Euthynnus alletteratusRafinesque, 1810) Little tunny
地中海黒海カリブ海メキシコ湾を含む大西洋の熱帯・温帯沿岸域に分布する。
Euthynnus lineatus Kishinouye, 1920 Black skipjack tuna
東太平洋の熱帯・温帯海域に分布する。

利用

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カツオマグロシイラなどを狙った釣り延縄漁獲されるほか、定置網などの沿岸漁業でも混獲される。フィリピンマレーシアパキスタンインドなどでは重要な漁獲対象となっており、1990年代には年間10万トン前後が捕獲された[14]

個体数が少なく本種単独では大群を作らないため専門に狙う釣り方はないがカツオ・ソウダガツオ類に混じって釣れることが多く、それらと同様に活イワシの泳がせ釣り・一本釣り・ルアー釣りで釣れるほか、島嶼部では磯・防波堤からのカゴ釣り・泳がせ釣りでヒラマサの外道として釣れる場合がある[12]

身はカツオに似た赤身で[12]日本では刺身たたき(土佐造り)なめろう竜田揚げ[8]角煮[8]焼き魚などで食べられ、は秋 - 春である[12]。台湾では刺身、スープ、鉄板焼などに利用されている。食用以外にマグロカジキなどの釣り餌として使われることもある。日本では、2キログラムを超える魚は1キログラムあたり1500円以上の高価で取引される[15]

マグロと違って小型であることから既存の魚の養殖施設を活用でき、味がマグロに似ておりクロマグロの代替魚としての需要を見込めることから[16]、愛媛県と和歌山県では養殖の研究が進められ、出荷・販売も行われている[17]。課題は知名度の低さであるが[18]、愛媛では「伊予の媛貴海」(ひめたかみ)[19]及び「媛スマ」[20]、和歌山では「海の三ツ星」のブランド名で売出しを図っている[21][22]

脚注

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  1. ^ a b c Euthynnus affinis” (英語). Animal Diversity Web(official website). University of Michigan Museum of Zoology. 2012年12月11日閲覧。
  2. ^ Cantor, T.E., 1849. J. Asiatic Soc. Bengal, 18(2): 1088-1090
  3. ^ a b c Euthynnus affinis(Cantor, 1849)” (英語). FishBase Online(official website). FishBase. 2012年12月11日閲覧。
  4. ^ a b c d e ぼうずコンニャク. “スマ”. 市場魚介類図鑑. 2019年4月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月26日閲覧。
  5. ^ 榮川省造『新釈 魚名考』青銅企画出版、1982年9月25日。 
  6. ^ “宮古島「幻の高級魚」ウブシュ、水揚げゼロの異常事態 軽石で出漁できず、中国情勢も影響”. 琉球新報. (2021年2月12日). オリジナルの2021年2月11日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220211225251/https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1469465.html 
  7. ^ “「トロより脂が乗った高級魚」沖縄・宮古島の冬の味覚ウブシュ、漁獲ゼロの異変”. 沖縄タイムス. (2022年2月18日). オリジナルの2022年2月18日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220218000351/https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/912442 
  8. ^ a b c d e f 石川 & 瀬能 2010, p. 250
  9. ^ Euthynnus affinis” (中国語). 雙語詞彙、學術名詞暨辭書資訊網. 國家教育研究院. 2016年10月13日閲覧。
  10. ^ “マグロ代わりに「スマ」注目”. 信濃毎日新聞 (信濃毎日新聞社): p. 4. (2014年12月31日) 
  11. ^ a b c スマとは”. コトバンク. 朝日新聞社. 2019年4月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月26日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g h i スマの特徴”. Honda釣り倶楽部. 本田技研工業. 2019年4月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月26日閲覧。
  13. ^ タイセイヨウヤイト(新称)(Little tunny), “taiseiyou-yaito””. (公式ウェブサイト). 独立行政法人 水産総合研究センター 開発調査センター. 2012年12月11日閲覧。
  14. ^ Carpenter, Kent E. & Volker H. Niem. 2001. FAO Species Identification Guide: The Living Marine Resources of The Western Pacific. Vol. 6: 3732. Food and Agriculture Organization.
  15. ^ “スマ養殖 夢育て・県が16年出荷目指し技術研究”. 愛媛新聞 (愛媛新聞社). (2014年8月12日). オリジナルの2017年7月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170712194938/http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20140812/news20140812562.html 2017年7月12日閲覧。 
  16. ^ “養殖スマおいしさPR 技術研究の県が試食会”. 愛媛新聞 (愛媛新聞社). (2014年10月13日). オリジナルの2017年7月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170712195038/http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20141013/news20141013498.html 2017年7月12日閲覧。 
  17. ^ 幻の高級魚“スマ”研究の歴史~元祖養殖スマができるまで~”. 和歌山県水産試験場 (2012年). 2017年7月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年7月12日閲覧。
  18. ^ “小型マグロ「スマ」に注目 新たな養殖魚へ愛媛県など研究本格化”. 産経新聞 (産業経済新聞社). (2014年7月14日). オリジナルの2017年7月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170712195135/http://www.sankei.com/region/news/140714/rgn1407140070-n1.html 2017年7月12日閲覧。 
  19. ^ “「媛貴海」味は上々 松山で県産スマの試食会”. 愛媛新聞 (愛媛新聞社). (2016年1月15日). オリジナルの2017年7月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170712195127/http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20160115/news20160115952.html 2017年7月12日閲覧。 
  20. ^ 媛スマ(伊予の媛貴海)について公表します”. 愛南町 (2021年7月9日). 2021年9月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月22日閲覧。
  21. ^ “全国初、養殖スマ出荷 県水試グループ、「全身トロ」で美味”. 紀伊民報 (紀伊民報). (2016年1月12日). オリジナルの2016年1月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160116043223/http://www.agara.co.jp/news/daily/?i=307921&p=more 2017年7月12日閲覧。 
  22. ^ “養殖スマ、販売へ向け出荷作業 ブランド名「海の三ツ星」”. 紀伊民報 (紀伊民報). (2016年1月15日). オリジナルの2016年3月2日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160302114734/http://www.agara.co.jp/news/daily/?i=308101&p=more 2017年7月12日閲覧。 

参考文献

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  • 藍澤正宏、河端寛司、坂本一男、佐藤寅夫、鈴木寿之『さかなの見分け方 ― 詳細図鑑』(新装版)講談社、2002年4月3日。ISBN 978-4062112802 
  • 檜山義夫監修 編『魚』 〈4〉(改訂版)、旺文社〈野外観察図鑑〉、1998年4月10日。ISBN 4-0107-2424-2 
  • 岡村収ほか監修 編『日本の海水魚』山と渓谷社〈山溪カラー名鑑〉、1997年8月20日。ISBN 4-635-09027-2 ※サバ科執筆者:中村泉。
  • 内田亨監修 編『日本動物図鑑 - 学生版』(第2版)北隆館、1990年12月。ISBN 4-8326-0042-7 
  • 永岡書店編集部 編『釣った魚が必ずわかるカラー図鑑』永岡書店、2006年8月。ISBN 4-5222-1372-7 
  • 石川皓章瀬能宏 著、隔週刊つり情報編集部 編『海の魚大図鑑』日東書院本社、2010年12月1日、250頁。ISBN 978-4528012103 
  • dancyu編集部 編『dancyu 満天☆青空レストラン 2016 Autumn ニッポンレシピきのこ』プレジデント社、2016年9月。ISBN 4-8334-7537-5 

関連項目

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外部リンク

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