エクジソン
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エクジソン | |
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(2S,3R,5R,9R,10R,13R,14S,17R)-17- [(2S,3R)-3,6-ジヒドロキシ-6-メチルヘプタン-2-イル]-2,3,14-トリヒドロキシ-10,13-ジメチル- 2,3,4,5,9,11,12,15,16,17-デカヒドロ- 1H-シクロペンタ[a]ファナントレン-6-オン | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 3604-87-3 |
PubChem | 19212 |
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特性 | |
化学式 | C27H44O6 |
モル質量 | 464.63 g/mol |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
エクジソン(Ecdysone; エクダイソン)は、昆虫のホルモンの一種[1][2]。
前胸腺から分泌されるステロイドホルモンで、脱皮(ecdysis)または変態を促進する作用があり、脱皮ホルモン(Molting hormone)とも呼ばれる。
概要
[編集]エクジソンはホルモン前駆体であり、末梢の組織で20-ヒドロキシエクジソン(20E)に代謝されることで機能を発揮する。
これらの類似構造を持つホルモンを総称してエクジステロイド(ecdysteroid)とも呼ぶ。これらは植物にも存在し、植物エクジソンと呼ぶ。
昆虫以外の節足動物にも存在し同様の機能を有する。甲殻類ではY器官から分泌される。
哺乳類のステロイドホルモンよりも水酸基が多いため、水溶性が高い。合成過程や作用機序には、哺乳類のステロイドホルモンとの類似点もあれば、相違点もある[3]。
歴史
[編集]- 1940年 福田宗一(当時片倉工業研究所、のち名古屋大学)および室賀兵左衛門によってカイコの前胸腺から脱皮・変態を促進する物質が分泌されることが示された[4][5]。
- 1954年 A. ButenandtとP. Karlsonによってカイコの蛹500kgから25mgのecdysoneが単離される。
- 1963年 P. Karlsonによってカイコの蛹1000kgから250mgの結晶ecdysoneを得て化学構造が決定した。
- Kuzmenko Alexander I., Niki Etsuo, Noguchi Noriko (jun 2001). “New Functions of 20-Hydroxyecdyson in Lipid Peroxidation”. Journal of oleo science (日本油化学会) 50 (6): 497-506. doi:10.5650/jos.50.497. ISSN 13473352. NAID 10006789953 .
脚注
[編集]- ^ 竹井祥郎、溝口明『多様性の内分泌学: ホルモンの統合的理解のために』丸善出版、2021年11月1日。
- ^ 園部治之、長澤寛道 編『脱皮と変態の生物学: 昆虫と甲殻類のホルモン作用の謎を追う』東海大学、2011年5月1日。
- ^ Okamoto, Naoki; Fujinaga, Daiki; Yamanaka, Naoki (2023) (英語), Steroid hormone signaling: What we can learn from insect models, 123, Elsevier, pp. 525–554, doi:10.1016/bs.vh.2022.12.006, ISBN 978-0-443-13455-5 2024年7月27日閲覧。
- ^ 学士院記事 16巻8号
- ^ 西尾敏彦 編『昭和農業技術史への証言 第10集 (人間選書 274) 第3話 農芸化学の研究生活回顧―生物活性物質の研究者からサポーターへ 鈴木昭憲述』農山漁村文化協会、2012年12月1日、139-196頁 。