神戸山口組
神戸山口組の代紋「山菱」 | |
設立 | 2015年8月27日 |
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設立者 | 井上邦雄 |
本部 | 〒651-0093 日本・兵庫県加古郡稲美町中村字池之跡1379-10[1][2] |
首領 | 井上邦雄 |
活動期間 | 2015年 - 現在 |
構成員数 (推定) | 約400人(2023年末時点)[1] ┗構成員/約140人 ┗準構成員/約260人 |
友好組織 | 池田組 |
敵対組織 | 六代目山口組[1] 絆會 |
神戸山口組(こうべやまぐちぐみ)は、兵庫県加古郡稲美町中村字池之跡1379-10[1][2]に本部を置く特定抗争指定暴力団[1]。組員数は2023年末時点で約400人(構成員は約140人、準構成員は約260人)[1]。
かつては兵庫県淡路市志筑88-1に本部を置いていた[3]。その後、淡路市から兵庫県神戸市中央区二宮町3-10-7に移転し本部を構えていたが、2023年に民間の不動産事業者に売却し、稲美町へ移転したことが2023年7月21日に兵庫県公安委員会により発表されている[4][5]。
六代目山口組、住吉会及び稲川会とともに、警察庁から主要暴力団として位置づけられている[1]。
概要
[編集]警察庁の報告によると、2015年(平成27年)8月27日に指定暴力団・六代目山口組を離脱した13名の直系組長により結成された組織であり、組長は四代目山健組組長を務めていた井上邦雄である[6]。
分裂の背景には、六代目山口組が司忍や髙山清司らの母体である名古屋の弘道会出身者を重用していることに対して、以前の主流派であった山健組等の関西系組織の不満があったものとされている[7]。
六代目山口組で毎月65万円とされる上納金が神戸側では10万円まで減額され、一部の幹部に対しては1,000万円単位の支度金まで用意されるケースもあるとされる[8]。
結成以後、六代目山口組との抗争状態が続き、発砲や車両突入などの抗争事件が2016年3月6日までに20都道府県で49件発生し、翌日7日に警察が対立抗争状態と認定してから2023年末までに100件発生している[1][9]。
来歴
[編集]2014年(平成26年)10月頃、後に神戸山口組の最高幹部となるメンバーが、六代目山口組からの離脱をジャーナリストの溝口敦に仄めかしている[10]。
2015年(平成27年)8月26日、六代目山口組若頭補佐・四代目山健組組長・井上邦雄ら反弘道会派、あるいは親山健組的立場にある13人が各々の組織を率いて六代目山口組を離脱した。
翌日の27日には、井上邦雄を組長として離脱者で盃事を挙行し神戸山口組の結成を発表。同日、六代目山口組はこの13人に処分を下し、特に若頭補佐以上の執行部と元執行部メンバーである入江禎(二代目宅見組組長)、井上邦雄(四代目山健組組長)、寺岡修(俠友会会長)、正木年男(正木組組長)、池田孝志(池田組組長)の5人には重い絶縁処分が下された。
離脱以降、六代目山口組側の複数の傘下組織ならびに過去に処分を受け解散した組織の元組員を取り込んだ事で、2015年(平成27年)末には6,100人(構成員は約2,800人[11]、準構成員は約3,400人)[1]の勢力を擁した。
2016年(平成28年)2月19日には、それまで不定であった総本部(本部・事務局機能)を、傘下俠友会の本部事務所に設けることが明らかにされた[12]。
同年4月15日、兵庫県公安委員会により指定暴力団に指定された(指定番号6316-1)[13]。また読売新聞や日本経済新聞は、警察当局が六代目山口組と共に当組織を特定抗争指定暴力団へ指定する事を検討中と報じた[14]。
2017年(平成29年)4月30日、傘下の一部団体が組の運営方針に異議を唱え神戸山口組を離脱。反旗を翻す形で新組織・任俠団体山口組(現・絆會)を結成した[15][16]。
同年10月2日には、暴力団追放兵庫県民センターが本部事務所の使用差し止めを求める仮処分を神戸地方裁判所に申し立てた[17]。これを受け、神戸山口組側は地裁が判断する前の同月25日、淡路市内にあった本部事務所を閉鎖した[18]。
2019年(令和元年)12月に兵庫県公安委員会など6府県の公安委員会により、六代目山口組と共に特定抗争暴力団に指定され、2020年(令和2年)1月7日の官報告示をもって発効した。
2020年(令和2年)7月に、井上邦雄の出身母体であり最大の有力団体でもある山健組が傘下を離れ、独立(後に六代目山口組に再加入)して以降、池田組、正木組と結成時の有力団体が離脱・解散して弱体化が急速に進み、組員数は2021年末の時点で約1,000人[19](構成員約510人[20]、準構成員約540人)にまで減少した。
2022年(令和4年)には、さらに俠友会、二代目宅見組が離脱して組員数は約760人[注 1][21]、うち構成員については約330人[22]に減少したと推定される。
綱領と組指針
[編集]山口組と同様に田岡一雄が制定した下記の五箇条から成る綱領があり、定例会等で唱和される。
一、内を固むるに和親合一を最も尊ぶ
一、外に接するに愛念を持し信義を重んず
一、長幼の序を弁え礼に依って終始す
一、世に処するに己の節を守り譏を招かず
一、先人の経験を聞き人格の向上を図る
指針
[編集]- 平成30年度 - 一燈照隅(いっとうしょうぐう・一人ひとりが一隅を照らすことになれば、人の和が成り立つこと)[26]
- 平成31年(令和元年)度 - 一心一意(いっしんいちい・心を一つにして、共に思い励むこと)
- 令和2年度 - 不易流行(ふえきりゅうこう・いつまでも変化しない本質的なものを忘れないなかにも、新しい変化を重ねているものを取り入れていくこと)
- 令和3年度 - 金剛不壊(こんごうふえ・非常に堅固で、決して壊れないこと)[27]
- 令和4年度 - 刻苦義励(こっくぎれい・心身を苦しめてでも、信念のために励むこと)
組織図
[編集]組長
[編集]氏名 | 山口組での最終役職 | 出身二次団体 | 在任期間 |
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井上邦雄 | 若頭補佐 | 四代目山健組 | 2015年8月 - 現在 |
執行部
[編集]役職 | 氏名 | 二次団体 | 本部 |
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若頭 | 小嶋恵介 | 二代目中野組 | 大阪府堺市 |
舎弟頭 | 近藤大恵 | 徳心会 | 東京都 |
舎弟頭補佐 | 宮下和美 | 二代目西脇組 | 神戸市西区 |
組織委員長 | 元満志郎 | 二代目安部組 | 福岡県福津市 |
若頭補佐 | 藤田恭道 | 二代目英組 | 大阪市西淀川区 |
舎弟
[編集]役職 | 氏名 | 二次団体 | 本部 |
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舎弟 | 岡本久男 | 二代目松下組 | 神戸市中央区 |
舎弟 | 須ノ内祥吾 | 二代目東生会 | 大阪市淀川区 |
幹部・若中
[編集]役職 | 氏名 | 二次団体 | 本部 |
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幹部 | 清崎達也 | 四代目大門会 | 熊本市中央区 |
若中 | 親泊吉広 | 四代目古川組 | 兵庫県尼崎市 |
若中 | 岡田 豊 | 西虎会(西脇組) | 神戸市西区 |
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ この数字は上記2つの離脱団体の構成員数を含むとする指摘がある。
出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i “令和5年における組織犯罪の情勢【確定値版】”. 警察庁組織犯罪対策部. pp. 1-37 (2024年3月21日). 2024年4月14日閲覧。
- ^ a b 大阪府警察. 指定暴力団一覧表 (Report). 2024年4月14日閲覧。
- ^ 官報 平成30年12月7日 本紙 第7405号
- ^ “「神戸山口組」本部事務所を神戸から兵庫・稲美町に…「絆會」も尼崎市から大阪・中央区へ” (日本語). 読売新聞. (2023年7月30日) 2024年4月13日閲覧。
- ^ “暴力団抗争の警戒区域 高砂市と稲美町追加し5市町に 兵庫県公安委” (日本語). 産経新聞. (2023年8月10日) 2024年4月13日閲覧。
- ^ a b 『平成27年の暴力団情勢 (PDF) 』(警察庁、2016年2月)
- ^ 『【ゼロから分かる「神戸山口組」分裂騒動】ヤクザの名門「山健組」の内紛はなぜ起きたのか?』 (p.2) 尾島正洋 2020年7月25日 文春オンライン
- ^ “クローズアップ現代+ 独占取材 山口組“分裂抗争”の内幕”. NHK. (2016年4月7日). オリジナルの2020年4月30日時点におけるアーカイブ。 2016年4月11日閲覧。
- ^ 『読売新聞 第18354号』 “山口組分裂「抗争」認定” (35面) 2016年3月8日 読売新聞社
- ^ 『暴漢に刺された男・溝口敦が明かす「私の壮絶山口組体験」』 2021年7月21日 FRIDAYデジタル
- ^ 『山口組の分裂抗争に大異変が…!異例の抗争長期化で二つの勢力の構成員数に圧倒的な差がついていた 山口組分析レポート その1』 尾島 正洋 2023年3月15日 現代ビジネス
- ^ 『神戸山口組、淡路島を本部に決定 直系団体「侠友会」の事務所』 2016年2月19日 J-CASTニュース
- ^ 官報本紙 (p.8) 2016年4月15日、2016年4月16日閲覧
- ^ 『神戸山口組、指定暴力団に 国家公安委が確認』 2016年4月7日 日本経済新聞
- ^ 『新組織は「任俠団体山口組」 神戸山口組から離脱』 2017年4月30日 神戸新聞NEXT
- ^ 『神戸山口組が分裂 新組織は「任侠団体山口組」』 2017年5月1日 デイリースポーツ
- ^ “代理訴訟 普通の生活願い 神戸山口組本部差し止め申請”. 毎日新聞 (2017年10月12日). 2023年3月21日閲覧。
- ^ “本部事務所を閉鎖か、神戸山口組 住民代理訴訟受け”. 産経新聞 (2018年10月30日). 2023年3月23日閲覧。
- ^ 兵庫県警察. 兵庫県警察-暴力団対策の推進 (Report). 2022年4月22日閲覧。
- ^ 『「神戸山口組」に異変 構成員減少、3分の1に 山健組の古巣合流など要因』 2022年1月20日 ラジトピ
- ^ 『暴力団勢力、人数減と高齢化が顕著に 50代以上が半数超』 吉田伸八 2023年3月23日 朝日新聞デジタル
- ^ 『《赤字破門の衝撃》離脱者相次ぐ神戸山口組でさらなる“永久”追放「6代目との構成員数は10対1以上の差」《最新勢力図・未公開データ》』尾島 正洋 2023年3月2日 文春オンライン
- ^ “山口組「事始め式」激変全容 直系組長17人減る 神戸山口組も「納会」で対抗”. iza. (2015年12月15日) 2023年3月21日閲覧。
- ^ 『神戸山口組の年末「納会」今年はコンパニオンも呼ばず緊迫』 2016年12月24日 Smart Flash
- ^ 『分裂山口組、それぞれの指針に“異変” 長引く対立抗争の影響が色濃く反映』 2016年12月15日 ZAKZAK
- ^ “【山口組速報】12月13日、3つの山口組が同じ兵庫県に集結…各会合で示された来年の「指針」とは?”. ビジネスジャーナル. (2017年12月18日) 2018年1月10日閲覧。
- ^ 『神戸山口組に「重鎮逝去」の悲報が飛び込む一方で、闘争継続を表明するかのような組指針を発表』 山口組問題特別取材班 2020年12月22日 ビジネスジャーナル