gNewSense
gNewSense 4.0 | |
開発者 |
現在 : Sam Geeraerts 過去 : K.Goetz Brian Brazil and Paul O'Malley |
---|---|
OSの系統 | Unix系 |
開発状況 | 開発終了[1] |
ソースモデル | オープンソース |
初版 | 2006年11月2日 |
最新安定版 | 4.0[2] / 2016年5月2日 |
最新開発版 | 4.0 Alpha 1[3] / 2014年12月2日[3] |
リポジトリ | |
アップデート方式 | APT |
パッケージ管理 | dpkg / Synaptic パッケージ・マネージャー |
プラットフォーム | Loongson, x86, x86-64 |
カーネル種別 | モノリシック (Linux) |
ユーザランド | GNU |
既定のUI | GNOME |
ライセンス | GNU Free System Distribution Guidelines (GNU FSDG) による排他的フリーソフトウェアライセンス[4] |
ウェブサイト |
www |
gNewSenseは、フリーソフトウェア財団からの後援を受け開発されているDebianベースのコンピュータオペレーティングシステムである。その目標はユーザフレンドリ性を保ちつつ、(バイナリ・ブロブのような)プロプライエタリソフトウェアやフリーでないソフトウェアを全て除去することにある。フリーソフトウェア財団はgNewSenseを全面的にフリーソフトウェアで構成されているOSと認めている[5]。
gNewSenseはプロプライエタリソフトウェアに対しては比較的厳しい姿勢をとっている。例えば、プロプライエタリソフトウェアのインストール方法を扱った文書なども排除している[6]。
歴史
gNewSenseのプロジェクトは2006年にBrian BrazilとPaul O'Malleyが立ち上げたもので、元々はUbuntuベースであった。1.0リリース後、フリーソフトウェア財団の支援を受けるようになった[7]。
2年間リリースがないため、2011年8月8日にDistroWatchはgNewSenseを "dormant" として分類した。2012年9月までにDistroWatchは状態を "active" に再び変更し、2013年8月6日にDebianを直接ベースにした最初のバージョンであるgNewSense 3 "Parkes" がリリースされた[8][9][10][11]。
2021年4月、gNewsenseは削除された。[12]
技術的観点
デフォルトではgNewSenseはGNOMEを使っている。グラフィカルユーザインタフェースはXディスプレイマネージャやウィンドウマネージャなどのホストされたリポジトリを通じてインストール可能なデスクトップ環境をユーザーが選んでカスタマイズできる[13]。
Ubiquityインストーラーにより、インストール前にコンピュータを再起動することなくLive CD環境内からハードディスクにインストールできる[14]。
標準システムツール以外にも以下のようなソフトウェアが付属している[15]:
- OpenOffice.org製品一式 - オフィススイート
- GNOME Web - インターネットブラウザ
- Empathy - インスタントメッセンジャー
- GIMP - 写真などのビットマップ画像用のグラフィック編集ツール
- GNUコンパイラコレクションなどのツール - デフォルトでインストールされるソフトウェア開発ツール
インストール
オペレーティングシステムを起動しディスクにインストールするためにLive CDが使える。CDイメージはダウンロードで取得可能である[16]。
バージョン
gNewSenseには4つのメジャーリリースが存在する:
バージョン | コードネーム | リリース日 | サポート期間 | ベース | サポートするアーキテクチャ |
---|---|---|---|---|---|
1.0 | DeltaD | 2006-11-02 | 2008-05-01 | Ubuntu 6.06 "Dapper Drake" | — |
2.0 | DeltaH | 2008-04-30 | 2014-01-03 | Ubuntu 8.04 "Hardy Heron" | — |
[10][11][17] | 3.0Parkes | 2013-08-06 | [18] | 2015-12-31Debian 6.0 "Squeeze" | i386, amd64, Lemote Yeeloong |
4.0 | Ucclia | 2016-05-02 | 2018-05-31 | Debian 7 "Wheezy" | i386, amd64, Lemote Yeeloong |
サポート終了 現行バージョン |
他のディストリビューションとの比較
gNewSenseプロジェクトはフリーでないソフトウェアのリポジトリを提供せず、フリーでない文書や作品の多くは除去されている。gNewSenseはUbuntuをベースにしていたが、"Universe" パッケージ・リポジトリが有効になっていた。Mozilla Firefoxの修正に端を発した商標問題を避けるため、gNewSense 1.1はFirefoxを "BurningDog" とブランド名を変更した。同様の理由でBurningDogはAdobe Flashなどの様々なWebメディア用のフリーでないプラグインを提供しない[19]。gNewSense 2.0はBurningDogを放棄しGNOMEのコンポーネントであるウェブブラウザEpiphany(後に "Web" と改名)をデフォルトのウェブブラウザとして採用したが、オプションとしてGNU IceCatをコンパイルし起動することを推奨しその手引きを用意した[20][21]。gNewSense 3.0はWebをデフォルトのブラウザとするが、DebianのIceweaselをプロプライエタリなアドオンへのアクセスを提供しないよう修正したバージョンも用意した[22]。
Debianもフリーソフトウェア主義のためにライセンスの要件や遵守については厳しいことで知られるLinuxディストリビューションである。DebianとgNewSenseは両方ともフリーでないソフトウェアやバイナリ・ブロブを厳密に排除しているが、Debianはフリーでないソフトウェアやファームウェアのバイナリを非公式なリポジトリで保守しホストしている。さらにDebianフリーソフトウェアは時々、Debian社会契約[23]の第5条で述べられているように、フリーでないソフトウェアの使用はユーザー自身が情報に基づいて判断することが最も重要であるべきだという理論の元で、必要に応じてプロプライエタリソフトウェアのインストールについての依存や提案をする(Debianのプロジェクト管理は民主的なので、このような姿勢が頻発する論争の火種となるのを黙認してしまっている[24][25])。これに比べ、gNewSenseはフリーでないソフトウェア、ファームウェア、拡張、またはプラグインの使用への依存や提案をするパッケージは一切提供せず、さらにgNewSenseプロジェクトは、いかなる理由であってもプロプライエタリソフトウェアへの便宜を図るアクセスを提供しない。これらを提供することはフリーソフトウェアソリューション開発義務を撤回することになると考えているからである。Debian同様、gNewSenseのポリシーにより変更不可部分のあるGNU Free Documentation Licenseでライセンスされた文書を含むことができない[26]。GNUプロジェクト自体がリリースしている多くのマニュアルや文書がこれに当たる。
gNewSenseは創設者かつ開発者のPaul O'Malleyが以前はUbuntuで作業をしていたため、最初はUbuntu(これ自体がDebianのフォークである)からのフォークであったが、gNewSense 3.0ディストリビューションはそのソフトウェアディストリビューションの基盤としてはDebianを追っていた。この理由の一つとしては、DebianプロジェクトがDebianの公式ディストリビューションに含まれるフリーソフトウェアと無料アクセスを提供するプロプライエタリソフトウェアとを入念に分離していることが挙げられる[27]。実際に、(IceweaselやIcedoveのような)Debian固有のパッケージを含むgNewSenseへ移植されたパッケージの多くは、フリーでないソフトウェアオプションへの無料アクセスをもう提供しないよう単に修正しただけである[22]。
制限
gNewSenseのリポジトリにはフリーソフトウェアしか含まれていないため、(無線ネットワークカードのように)ファームウェアが必要だがフリーなファームウェアが存在しないハードウェアはサポートされない[28]。
2008年5月1日、Mesa 3Dにライセンス問題が発生した[29]ため、3次元コンピュータグラフィックスとアプリケーションのサポートも除去された[30]。2009年1月13日以降その問題が解決したため、2.2のリリースでは3次元コンピュータグラフィックスのサポートが復活した[31]。
評価
2013年8月にgNewSense 3.0をレビューした時、DistroWatchのJesse Smithは、OpenOffice.org 3、(Linux-libre「ツール」をベースとする[32])Debianカーネルからブロブを取り除いた2.6.32 Linuxカーネル、Iceweasel 3.5およびGNOME 2.30を含む、提供されるアプリケーションの多くはかなり古くなっていると記した。Smithは以下の言葉でこのレビューを結論付けた[28]:
一般的に言って、私はgNewSense 3.0に満足した。このディストリビューションはDebianをベースとしており、安定性と驚くべきパフォーマンスとを両方提供するため期待できる。このディストリビューションは贅肉を落とされ、高速で、そして散らかっていない。その反面、gNewSenseのシステムインストーラーとデフォルトパッケージ管理ツールは経験豊富なユーザーと連動しており、初心者であるLinuxユーザーにはおそらく険しい学習曲線を提供することになるだろう。多くは自動化されておらず、最低限手動で行うことが存在する。gNewSenseの主な特徴である、プロプライエタリソフトウェアがないということは諸刃の剣である。良い側面から見ると、このことはオペレーティングシステムを完全に検査でき、修正できさらに再配布できることを意味する。これはソフトウェア自由化の観点からは素晴らしいことである。このディストリビューションがほとんどのマルチメディアフォーマットと処理されたFlashコンテンツとをうまく公正にプレイできるという事実はフリーなオープンソースソフトウェアの力の誓約である。gNewSenseのソフトウェアポリシーと共に私がぶつかった唯一の問題は無線ネットワークカードに関しての事であった。ほとんどのディストリビューションはフリーでないインテルのファームウェアを組み込んでいるがgNewSenseはそれを含まないので、このことはgNewSenseディストリビューションが私のラップトップにはうまく合わないことを意味する。ただ私のデスクトップシステムには良く調和している。
リチャード・ストールマン(フリーソフトウェア財団の創設者および代表)は2010年1月にgNewSenseを使うと述べており[33]、2014年4月の時点でも使っていた[34]。それ以降、彼はTrisquelに乗り換えた[35]。
関連項目
脚注
- ^ “自由なGNU/Linuxディストリビューション一覧 - GNUプロジェクト - フリーソフトウェアファウンデーション”. 2022年1月24日閲覧。
- ^ “[gNewSense-users] gNewSense 4.0 released”. Lists.nongnu.org (2016年5月2日). 2016年5月2日閲覧。
- ^ a b “Ucclia alpha 1”. gNewSense-dev mailing list. 2017年10月16日閲覧。
- ^ “List of Free GNU/Linux Distributions - GNU Project - Free Software Foundation”. 26 May 2015閲覧。
- ^ “List of Free GNU/Linux Distributions - GNU Project - Free Software Foundation”. Gnu.org. 2013年6月23日閲覧。
- ^ “Community guidelines ? gNewSense GNU/Linux”. Wiki.gnewsense.org (2010年4月30日). 2011年7月2日閲覧。
- ^ “gNewSense 1.0 released ? Free Software Foundation”. Fsf.org. 2011年7月2日閲覧。
- ^ “DistroWatch.com: gNewSense”. 2021年2月9日閲覧。
- ^ Goetz, K. (2011年10月12日). “News”. gNewSense 2012年1月22日閲覧。
- ^ a b “FAQ ? gNewSense GNU/Linux”. gNewSense. 2014年7月19日閲覧。
- ^ a b Sneddon, Joey (2013年8月8日). “gNewSense 3 Released, Is No Longer Based on Ubuntu”. OMG Ubuntu 2013年8月10日閲覧。
- ^ “自由なGNU/Linuxディストリビューション一覧 - GNUプロジェクト - フリーソフトウェアファウンデーション”. 2022年1月24日閲覧。
- ^ Introduction to the Desktop Environment gnewsense.org
- ^ Using the Live CD gnewsense.org
- ^ Using gNewSense gnewsense.org
- ^ “Download - gNewSense GNU/Linux”. 2015年5月26日閲覧。
- ^ “Likely EoL date for gNewSense 3.1”. 2016年12月9日閲覧。
- ^ “gNewSense-dev mailing list”. 2017年10月16日閲覧。
- ^ “gNewSense Official Website | Main / PressRelease20070122”. Gnewsense.org (2007年1月22日). 2011年7月2日閲覧。
- ^ “gNewSense MainRepo (old)”. 2014年8月24日閲覧。
- ^ “gNewSense 3.0 IceCat Compile Instructions”. 2014年8月24日閲覧。
- ^ a b “gNewSense 3.0 Documentation, Differences with Debian”. 2014年8月24日閲覧。
- ^ “Debian Social Contract”. 2015年4月30日閲覧。
- ^ “2004: Debian General Resolution: Status of the non-free section”. 2015年4月30日閲覧。
- ^ “2006: Debian General Resolution: Handling source-less firmware in the Linux kernel”. 2015年4月30日閲覧。
- ^ “LicenceInformationUpdate - gNewSense GNU/Linux”. Gnewsense.org. 2013年8月7日閲覧。
- ^ “gNewSense FAQ”. 2015年4月30日閲覧。
- ^ a b Smith, Jesse (2013年8月26日). “Freedom and gNewSense 3.0”. DistroWatch 2013年8月31日閲覧。
- ^ xserver-xorg: wordy SGI license may not be free Archived 2008-09-27 at the Wayback Machine. bugs.gnewsense.org
- ^ “Main/Deltah ? gNewSense GNU/Linux”. Gnewsense.org. 2011年7月2日閲覧。
- ^ “3D graphics are 100% free software ? Free Software Foundation ? working together for free software”. Fsf.org. 2011年7月2日閲覧。
- ^ “/gnewsense/packages-parkes/linux-2.6 : contents of debian/README.gNewSense at revision 16”. gnu.org. 31 January 2017閲覧。
- ^ “An interview with Richard Stallman”. Richard.stallman.usesthis.com (2010年1月23日). 2011年7月2日閲覧。
- ^ Vito Gentile. “GNU/Linux Meeting 2014: Richard Stallman approda a Palermo” (イタリア語). HTML.it. 2014年4月19日閲覧。
- ^ “How I do my Computing”. 2015年5月26日閲覧。