パンツスーツを喪服としてもOK? 葬式・法事の前に抑えておきたいブラックフォーマルの基礎知識
2024-07-15 eltha
そもそもブラックフォーマルとは?「黒いスーツとは完全に異なるもの」
「ブラックフォーマルとは、黒いフォーマルウェア、つまり冠婚葬祭など改まった席で着る礼服のことを指します。喪服もブラックフォーマルに含まれます。ビジネススーツとの違いは、素材やデザインにも表れますが、わかりやすいのが“黒色の深さ”です。真っ黒で光沢がないのが特徴で、より深い黒に見えるように、弊社では濃染(のうせん)加工をした生地を使用しています。黒のスーツとブラックフォーマルを並べてみると色差は明確です。そのため、一着は用意しておいた方が無難だと思います」(谷本さん/以下同)
見た目が似ていても、礼服とビジネススーツは全くの別物。代用すると、シーンによっては礼儀を欠いた人と思われてしまいそうです。では、ブラックフォーマルを1着持っていれば、冠婚葬祭どのようなシーンでも万能に使えるのでしょうか?
「意外と知られていないですが、結婚式でもお葬式でも使うことができます。さらに七五三や入学式、卒業式などの式典でも活用できます。ただし、アクセサリーやバッグなどをコーディネートし、シーンによって使い分ける必要があります」
1着で七五三や入学式・卒業式までカバーできるのであれば、持っていても損はなさそうです。ただ、その着こなしにはセンスよりもマナーが求められそうで不安があります。大切なシーンで失敗しないためにも、ブラックフォーマルの活用方法をシーン別に聞いてみました。
正喪服、準喪服、略喪服…喪服には3種類の「格」がある
「正喪服は最も格式が高く、一般的には喪主様が着る礼服です。女性の洋装の場合、長袖、襟が詰まっている、丈はひざ下から足首ぐらいまで、ワンピースタイプ…などの条件を満たしたブラックフォーマルが正喪服として扱われます。皇族の方か喪主様以外は、ほぼ着る機会がありません。
準喪服は、遺族や参列者が葬儀や告別式で着用します。市場で販売されているブラックフォーマルは準喪服に当たりますので、一般の方はブラックフォーマル一着持っていれば弔事には広く対応できます。
略喪服はお通夜や弔問で着る服で、黒・濃紺・ダークグレーなど暗い色のワンピースやスーツであれば問題ありません」
ストッキングやバッグは黒。アクセサリーはゴールドや光る素材を避けることがマナーとされています。スカート丈が短いものやレースが華やかすぎるものもNGとされているので、冠婚葬祭を一着で着まわしたい場合、まずはお葬式に合わせて選ぶとよさそうです。
結婚式や式典では、小物やバッグを華やかに
「お悔やみの印象が強くなってしまうと、場にそぐわないこともあるので、小物で華やかさを出すといいと思います。ベージュのストッキングを履く、バッグを明るい色にするほか、コサージュやキラキラしたブローチを身に着けるのもおすすめです」
お葬式では「悲しみが重ならないように」と一連のパールネックレスを身に着けますが、結婚式などでは二連にして華やかさを出すと変化が。光る素材や透け素材など、お葬式でNGとされることが、結婚式やイベントでは推奨されると覚えておくとよさそうです。
同じブラックフォーマルを何十年も着ても良い?
「体形の変化をカバーできる、長く着られるスタイルを求められる方が多いです。将来を見据えてワンサイズ大きいものを買われる方もいます。長い目で見ると多少の変化はあるのですが、シンプルで流行り廃りのないデザインのものを選べば、長く使えると思います」
体形の変化が現れるほどの長い期間、使うことが想定されているブラックフォーマル。極端な例ですが、20代の頃に買ったブラックフォーマルを70〜80代になっても着続けてよいのでしょうか?
「着られる限りは、同じブラックフォーマルを着続けても問題ありません。しかし数年保管したままになることも多いブラックフォーマルは、虫食いや変色のトラブルもあるので定期的にチェックしていただくことをおすすめします」
体形の維持、手入れや保管の問題はありますが、カジュアルと違って「若作り」「流行遅れ」などと言われる心配はなさそうです。
パンツスタイルのブラックフォーマルを選んでも良い?
「日本フォーマル協会が定める準喪服に、パンツスタイルは含まれています。なので、パンツスタイル自体は問題ありません。弊社の2023年度の売上も、全体が横ばいの中、パンツスタイルだけが3〜4割増とわかりやすく伸びているので、需要は高まっていると思います。女性はワンピースでなければいけないという風潮自体がなくなってきていて、どの世代の方も好きなスタイルを選べるようになってきたのではないでしょうか」
暑い時期でも涼しく着られるサマーフォーマルを実現した商品もあり、ブラックフォーマルという形式の中でも快適に過ごせる選択肢は増えています。ただし、地方によってはワンピースが正式な装いだという考えが根強く残る場所も。
「マナーとしてダメなものではないということは大前提として、親戚や周りの空気感などを考慮しながら選ぶ服なのかなと思います」
谷本さんのお話を通して、ブラックフォーマルの装いには、マナーや場の雰囲気、親戚・知人との関係性が関わってくることがわかりました。マナーや立ち振る舞いに自信のない人ほど、“間違いのない1着”を事前に用意しておいた方が良いのかもしれません。
取材・文/森下なつ