[go: up one dir, main page]

H&K VP9もしくはSFP9(ヨーロッパおよびカナダ市場での名称)は、ドイツ銃器メーカーであるH&K社が開発し、2014年から製造している自動拳銃である。

H&K VP9
H&K VP9
概要
種類 警察用自動拳銃
製造国 ドイツの旗 ドイツ
設計・製造 H&K
性能
口径
  • 9 mm
  • .40
銃身長
  • 105 mm
  • 127 mm
使用弾薬
装弾数
  • 20発
  • 17発
  • 15発
  • 13発
作動方式 ティルトバレル式ショートリコイル
全長 186.5 mm
重量
  • 710 g (SFP9)
  • 753 g (VP9)
銃口初速 360 m/s
有効射程 50 m
テンプレートを表示

概要

編集

作動方式は、ティルトバレル式ショートリコイル[1]グロック17のようなポリマー・フレームとストライカー撃発方式を採用している。スライド後部にはコッキング操作をサポートするための突起と、ストライカー尾部の位置を目視可能とすることによりコッキング状態を知らせるファイアリングピン・インジケーターが付いている[2]。薬室に装弾されている状態ではエキストラクターの位置が変化し赤く表示される機能を備える[3]。セイフティはトリガーに組み込まれているトリガーセイフティと、ファイアリングピンセイフティを備える[4]

トリガーガードのグリップ側付根左右にパドル型かボタン型のマグキャッチがあり左右どちらからでも操作可能[1]。スライドキャッチも左右両サイドにあり左右どちらからでも操作可能[5]

ハンマー撃発式のH&K P30とスライド形状やフレームが似ており、P30の弾倉を流用できる[6]。P30と同様バックストラップとグリップパネルを交換出来、ピカティニー・レールを採用している[7][8]

開発時はVP9 (VP: "Volkspistole") という名称がつけられたが、類似した名称の他社製品が存在したため、欧州とカナダではSFP9 (SFP: "striker-fired pistol") という名称で販売した[1]。米国ではVP9の名称で販売している[9]

ドイツ連邦警察局アメリカ合衆国の警察が採用したほか、陸上自衛隊がSFP9を9mm拳銃の後継拳銃として選定したことが発表された[10]

自動拳銃の比較[疑問点]
アメリカ合衆国の旗 M1911 ベルギーの旗 BHP ドイツの旗 スイスの旗 P220[注 1] チェコの旗 Cz75 イタリアの旗 92F ドイツの旗 P226 オーストリアの旗 グロック17 ドイツの旗 SFP9 ロシアの旗 MP-443
画像                  
口径 .45 9mm 9mm
.45
9mm
装弾数[要出典] 7発 13発 9発 15発 17発 15-20発 18発
銃身[要出典] 127 mm 118 mm 112 mm 120 mm 125 mm 112 mm 114 mm 104 mm 112.5 mm
全長[要出典] 216 mm 200 mm 198 mm 206 mm 217 mm 196 mm 186 mm 187 mm 198 mm
重量[要出典] 1,130 g 810 g 830 g 1,000 g 970 g 964 g 703 g 753 g 950 g
作動方式[要出典] 反動利用
シングルアクション
反動利用
シングルアクションおよびダブルアクション
反動利用
ダブルアクション
反動利用


主なバリエーション

編集
SFP9
通常モデル。トリガーストロークが短め、トリガープルが軽めに設定されている軍用モデルのSF ("Special Forces")、トリガーストロークが長め、トリガープルが重めに設定されている法執行機関向けモデルのTR ("technische Richtlinie")の2種類がある。
SFP9 M
海軍向け仕様("M"はMaritimeの意)。耐塩水コーティングおよび OTB (Over The Beach) 仕様が施されたモデル。
SFP9 L
ロングスライド(長銃身)モデル。
SFP9 SK
コンパクトモデル。
VP9
米国の警察および民間市場に合わせたモデル。強装弾に対応し、通常モデルよりもスライドが重くなっている[1]

採用国

編集

日本での運用

編集

防衛省・陸上自衛隊はそれまで採用していた9mm拳銃の後継として、2017年度(平成29年度)予算において本拳銃とグロック17ベレッタAPXの3機種を調達し、2019年まで選定作業を行っていた[10]。そして2019年12月6日、同様に選定を行っていた新小銃とともに新拳銃としてSFP9の採用が発表された[28]。選定理由としては今回候補となった3機種全てが要求性能を満たしていると判断された上で、「性能」、「後方支援」、「経費」の項目において最も高得点を獲得したのが本拳銃になる[29]。特に経費の点では3機種中最も安く、量産単価で1式当たり7万円となっている[29][30]

陸上自衛隊における調達数としては1万4000丁が計画されている[29]。最初の調達は2020年度(令和2年度)予算において323丁が計上された[1]

2020年5月18日には「9mm拳銃SFP9」として、正式に報道陣に公開された[28][31][32][33]。公開されたモデルは耐水性および排水性に優れた「SFP9 M (Maritimeの意)」となっており、水陸機動団をはじめとする南西方面の部隊への配備が意識されている[34][35]

2023年度からは海上自衛隊と航空自衛隊からの調達が開始されている[36][注 2]


またドイツの新聞によると、2020年東京オリンピックを控えた警察も約2,000丁を調達したと報じられている[38]。オリンピック・パラリンピック関連警備の際に各地で目撃情報があったほか、2021年3月の東京マラソンでは警視庁機動隊銃器対策部隊でも配備されていることが確認された[21]

調達

編集
陸上自衛隊の9mm拳銃SFP9調達数[39][37]
予算計上年度 調達数 予算額
令和2年度(2020年度) 323丁 2,000万円
令和3年度(2021年度) 297丁 2,000万円
令和4年度(2022年度) 303丁 3,000万円
令和5年度(2023年度) 1,072丁 14,032万円
合計 1,995丁 21,032万円

脚注

編集

注釈

編集
  1. ^ 日本9mm拳銃としてライセンス生産
  2. ^ 令和5年年度は海上自衛隊が1,000丁、航空自衛隊が35丁調達[37](随意契約(基準以上)、新成物産と2024年3月29日契約)。

出典

編集
  1. ^ a b c d e SHIN 2020, p. 67.
  2. ^ SHIN 2020, pp. 68, 76.
  3. ^ SHIN 2020, p. 68.
  4. ^ SHIN 2020, pp. 70, 73.
  5. ^ SHIN 2020, p. 70.
  6. ^ TOSHI 2021, p. 18.
  7. ^ SHIN 2020, pp. 68, 71.
  8. ^ TOSHI 2021, pp. 15, 18.
  9. ^ SHIN 2020, p. 66.
  10. ^ a b c 新小銃・新拳銃の決定について”. 防衛省 (2019年12月6日). 2020年6月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年12月8日閲覧。
  11. ^ SFP 9: Das ist die neue Feuerwaffe der bayerischen Polizei”. 12 January 2018閲覧。
  12. ^ Heckler & Koch SFP9 wird neue Dienstpistole der Bayerischen Polizei”. all4shooters.com (DE). 12 January 2018閲覧。
  13. ^ Bayerische Polizei bekommt ab 2018 neue Dienstwaffe”. 12 January 2018閲覧。
  14. ^ Jpw. “STRATEGIE & TECHNIK: Berliner Polizei wählt HK SFP9 TR als neue Dienstwaffe”. 12 December 2017閲覧。
  15. ^ Niedersachsens Polizei bekommt für 7,5 Millionen Euro neue Pistolen”. 1 February 2016閲覧。
  16. ^ Archived copy”. 22 December 2015時点のオリジナルよりアーカイブ。20 December 2015閲覧。
  17. ^ Neue Pistolen für Brandenburgs Polizisten”. MAZ - Märkische Allgemeine. 20 December 2015閲覧。
  18. ^ thvo. “Mecklenburg-Vorpommern: Polizei bekommt 5700 neue Pistolen - svz.de”. 11 May 2022閲覧。
  19. ^ Japanese ground forces get new small arms”. Asian Military Review. 27 May 2020閲覧。
  20. ^ New assault rifle and new gun for the Japanese forces”. 11 December 2019閲覧。
  21. ^ a b 大塚 2022.
  22. ^ L'essentiel. “So sieht die neue Pistole der Police Grand-Ducale aus”. 26 October 2016閲覧。
  23. ^ Litauen beschafft HK SFP-9 SF Dienstpistolen”. 26 August 2020閲覧。
  24. ^ Lithuanian Armed Forces to Field the Heckler & Koch SFP9 -”. September 2020閲覧。
  25. ^ Terrill, Daniel (2016年8月6日). “Phenix City police replace aging Glocks with HK”. Guns.com. 2016年10月11日閲覧。
  26. ^ CITY OF MADISON POLICE DEPARTMENT STANDARD OPERATING PROCEDURE”. Madison Police. 2021年12月28日閲覧。
  27. ^ “Basler Polizeiwaffe fällt durch”. Basler Zeitung. https://bazonline.ch/basel/stadt/Basler-Polizeiwaffe-faellt-durch/story/23175767 
  28. ^ a b 松尾 2020, p. 6.
  29. ^ a b c 松尾 2020, p. 13.
  30. ^ 新たな重要装備品等の選定結果について” (PDF). 防衛省・自衛隊. 2020年7月6日閲覧。
  31. ^ “陸自、小銃を31年ぶりに更新 安定性、耐水性向上 拳銃は38年ぶり”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2020年5月18日). https://mainichi.jp/articles/20200518/k00/00m/040/097000c 2020年5月18日閲覧。 
  32. ^ “約30年ぶり新小銃 陸自、離島防衛に備え”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2020年5月18日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59233910Y0A510C2000000/ 2020年5月18日閲覧。 
  33. ^ 新「20式小銃」公開 排水性向上、拳銃も更新―陸自”. 時事通信社 (2020年5月18日). 2020年5月18日閲覧。
  34. ^ 松尾 2020, pp. 6, 13.
  35. ^ 松尾 2022, p. 23.
  36. ^ 令和5年度調達予定品目(武器調達官)” (PDF). 防衛装備庁. 2023年6月28日閲覧。
  37. ^ a b 契約に係る情報の公表(中央調達分)防衛装備庁
  38. ^ Cornelius Eyckeler; Carsten Hoffmann (2020年9月14日). “Bundeswehr kehrt Heckler&Koch Rücken”. Schwarzwälder Bote. https://www.schwarzwaelder-bote.de/inhalt.oberndorf-a-n-paukenschlag-bundeswehr-kehrt-hk-ruecken.c5a94795-95ca-4022-a606-0605256b5c74.html 2021年5月28日閲覧。 
  39. ^ 防衛省 予算等の概要

参考文献

編集
  • 大塚正諭「銃器対策部隊の新けん銃を確認 東京マラソン2021」『ストライクアンドタクティカルマガジン』第19巻、第4号、SATマガジン出版、45頁、2022年7月。ASIN B0B18F4DFQ 
  • SHIN「H&K VP9」『Gun Professionals』、ホビージャパン、66-79頁、2020年11月。 
  • TOSHI「H&K VP9」『Gun Professionals』、ホビージャパン、6-21頁、2021年9月。 
  • 松尾哲司「20式5.56mm小銃/9mm拳銃SFP9」『Gun Professionals』、ホビージャパン、6-13頁、2020年8月。ASIN B089764DF3 
  • 松尾哲司「陸上自衛隊 中央即応連隊 H&K SFP9 M」『Gun Professionals』、ホビージャパン、22-28頁、2022年5月。 

関連項目

編集

外部リンク

編集