正午
正午(しょうご)とは、地方時において、天球上を一定の速さで動くと考えた平均太陽が地平線より上で子午線を通過(正中:南中または北中)する時刻をいう。地方時における昼の正12時を指す[1]。
実際の太陽は、天球上を一定の速さでは動かない(均時差がある)ため、常に正午に子午線を通過するわけではない。また、経度が異なると平均太陽が南中する時点が異なるが、近代以降は通常は標準時が定められている地域(等時帯)ごとに標準子午線を平均太陽が通過する時刻が正午である。日本での標準子午線は兵庫県明石市を通る東経135度線である。
対義語で、太陽が地平線下の子午線を通過する時刻、すなわち夜の正12時を、正子(しょうし、子(ね)の刻の中間)という[2]。
概要
編集明治政府が「改暦ノ布告」を出す前には、時刻は十二支で数えており、午(うま)の刻が現在の午前11時ごろから午後1時ごろまでに当たることから、その中間の時刻(昼の12時)を「正午」と呼んだ(十二時辰#時刻との対応)。改暦により24時間制が導入された時に、24時間表示での0時から12時までの時間帯を、12時間表示では「午前」、24時間表示での12時から24時までの時間帯を、12時間表示では「午後」と呼称することが定められた[3](午前と午後#午前・午後の法令上の根拠)。
夜のほうの0時/12時(24時)では「正子」はあまり用いられず、「午前0時」の表記が日本では一般的である。
江戸時代の日本では、現在の表現でいう昼の正12時に相当する正午・午の時には時の鐘を9回鳴らし、「昼九つ」と呼ばれた。これは陰陽道では奇数を縁起のよい陽の数とし、その極値が9であることによる。
近代では時報として主に正午に空砲として大砲が撃たれ、正式には午砲と呼ばれ、俗に「昼ドン」あるいは単に「ドン」と呼ばれた。
一日の始まりとしての正午
編集天文学では、夜間の観測中に日付が変わるのは不便であるので、日界(一日の区切り・境界)を正午とする時刻系を用いていた。これを「天文時」といい、これに対して、正子を日界とする時刻系を「常用時」と呼んでいた。天文時はクラウディオス・プトレマイオスの創始以来、使われ続けてきたが、1925年1月1日からは、天文学でも常用時を用いることになった[4][5]。詳細は、グリニッジ標準時#天文時の廃止を参照のこと。
正午は午前か午後か
編集結論からいうと「正午が午前か午後かは表記に依存する」ということになる[要出典]。すなわち、「午前12時」と表記した場合は「午前の最後」の意味を持ち、「午後0時」と表記した場合は「午後の最初」の意味を持つ[7]。一方、「正午」と表記した場合は、午前と午後を区別する意味合いは持たない。よって、「午前12時」は時間帯の最後に用い、「午後0時」は時間帯の最初に用いるのが好ましい[8]。午前12時台の表記については午後0時台を用いる方が日本語としては正しい[9]。
「改暦ノ布告」では毎正時(0分)の呼び名を「時刻表」として掲げているが、24時間表示でいう12時は「午前12時」しかなく、「即午後零時」がない。ただ、「午前12時」という表記は正午に限り矛盾はないが、1秒でも過ぎると「午後」になってしまうため、「午前12時台」について「午前」を含む表記は矛盾となる。実際には「午後0時」又は24時間制で単に「12時」という表記が用いられることが多い[10][11][12]。
24時間表示では、午前/午後の概念がないため、単純に"12:00"を正午とすることで足りる。なお、西洋においても、正午は(英語を例に挙げるならば)"noon"か"midday"であり、午前にも午後にも属さず、その前が午前(AM)、後が午後(PM)である。
なお、NHKでは、昼の12時を「正午」、夜の12時を「午前0時」と表現している。[13]
脚注
編集- ^ 正午 「視太陽時では太陽が南中するとき、平均太陽時では午前12時(お昼の12時)のこと。」、天文学辞典、(社)日本天文学会
- ^ 正午 「午後12時(真夜中、午前0時)は正子(しょうし)という。かつて十二支を使って時刻を表していたことに由来し、それぞれ午の正刻、子の正刻という意味である。」、天文学辞典、(社)日本天文学会
- ^ “明治五年太政官布告第三百三十七号(改暦ノ布告)”. 2019年12月30日閲覧。
- ^ “暦Wiki/要素/1日とは?/1日の始まり”. 国立天文台暦計算室. 2019年12月30日閲覧。
- ^ 日本天文学会(編)「雑報 天文時の廢止」(PDF)『天文月報』第17巻第12号、日本天文学会、東京府北多摩郡三鷹村、1924年12月、187頁、ISSN 0374-2466、NCID AN00154555、NDLJP:3304053、2014年1月12日閲覧。
- ^ グリニッジ標準時#天文時の廃止
- ^ 同様に、「午後12時」は「正午から12時間後」を、「午前0時」は「正午より12時間前」を意味する。時刻としては同じ瞬間であるが、その時刻の属する日付は異なる[要出典]。
- ^ 例えば、「午前10時から午後0時まで」は誤りではないにせよ、違和感を持たれる場合がある。「午前10時から午前12時まで」の方が好ましい。同様に「昼休みは午前12時から午後1時まで」よりも「午後0時から午後1時まで」の方が好ましい。また、「午前11時から午前12時30分」ではなく「午前11時から午後0時30分」の方が好ましい。
- ^ 英米では午前12時台は「子夜からその12時間後まで」、午後12時台は「正午からその12時間後まで」を指す。このため、時計メーカーでは、輸出の関係で、デジタル時計の12時間表示を英米式に合わせているものが多い。
- ^ “午前12時? 午後0時?”. 情報通信研究機構周波数標準課. 2019年12月30日閲覧。
- ^ “質問4-1)正午は午前12時?それとも、午後12時?”. 国立天文台. 2019年12月30日閲覧。
- ^ パナソニック[リンク切れ]
- ^ “放送での時刻の伝え方・言い方 | ことば(放送用語) - 放送現場の疑問・視聴者の疑問 | NHK放送文化研究所”. www.nhk.or.jp. 2023年11月26日閲覧。