加戸守行
加戸 守行(かと もりゆき、1934年(昭和9年)9月18日 - 2020年(令和2年)3月21日)は、日本の政治家。元愛媛県知事(第14 - 16代)、元文部官僚、「美しい日本の憲法をつくる愛媛県民の会」実行委員長、日本会議愛媛県本部相談役[1][2]。
加戸 守行 かと もりゆき | |
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生年月日 | 1934年9月18日 |
出生地 | 関東州大連市 |
没年月日 | 2020年3月21日(85歳没) |
出身校 | 東京大学法学部 |
前職 | 日本音楽著作権協会理事長 |
所属政党 | 無所属 |
称号 |
正四位 旭日重光章 法学士(東京大学・1957年) |
民選第14 - 16代 愛媛県知事 | |
当選回数 | 3回 |
在任期間 | 1999年1月28日 - 2010年11月30日 |
経歴
編集知事就任前
編集関東州大連市に生まれる。愛媛県立八幡浜高等学校、東京大学法学部を1957年に卒業し、文部省(現:文部科学省)に入省[要出典]。
その後、1970年7月から1974年6月まで文化庁著作権課長として著作権法施行令及び同法施行規則を立案、ベルヌ・万国両条約パリ改正会議など著作権関係国際会議に8回出席している。1983年6月、文化庁文化部長。1983年10月、文化庁次長として著作権法一部改正など5本の法案を担当・成立させた。現行の著作権法の草稿執筆者としても知られる。1988年に同省の大臣官房長に就任。1989年4月12日、西岡武夫文部大臣の下、阿部充夫事務次官を残して、省内主流の加戸・吉村澄一初等中等教育局長・斎藤諦淳生涯学習局長らがリクルート事件に連座して辞職。その後日本芸術文化振興会理事長、日本音楽著作権協会(JASRAC)理事長(1995年11月-1998年11月)などを歴任[要出典]。
知事就任後
編集1999年1月3日に行われた愛媛県知事選に出馬。自民党・社民党・自由党・えひめ民社協会・民主愛媛・連合愛媛会長の推薦、公明支持を受けた[3]。自民党の越智伊平衆議院議員や一部自民党県議が支持する現職の伊賀貞雪知事などを破り、初当選。2010年まで3期12年務めた。全国の都道府県知事で唯一の文部省出身であった。2008年には社会保障国民会議委員を兼務。
2010年5月26日に任期満了前の引退の意向を示し[4]、同年9月14日の県議会で任期満了前に退任することを正式に表明した[5]。任期を2ヶ月残して退任することは「正月明けの選挙を避け、来年度予算や人事を新知事に委ねるため」[6]としていた。2010年11月30日に退任。退任会見では、12年間で氏だからこそできた施策として愛媛県武道館の建設、後悔の残ることとして義務教育費国庫負担の国の負担率引き下げを挙げた[7]。
歴史教科書採択問題
編集2001年、2002年の県立中学(中高一貫校)、県立学校の教科書採択に際し、注目された歴史教科書について、賛否両論があるなか、「扶桑社版がベスト」と発言。県教育委員会は扶桑社版(いわゆる「つくる会」教科書)を採用。当時の県教育長も知事の意向を汲んだとの発言をしており、一部では知事の教育への介入ではないかと議論を呼んだ[8][9]。採択理由について当時の土居教育委員会委員長は記者会見で「自国の文化と伝統の特色を広い立場から考えさせ、国民としての自覚を育てるという(学習指導要領の)教育目標に最も沿った教科書と判断した」と述べた。[10]
2005年8月の採択でも、県立学校では扶桑社版を引き続き採用した。
2009年8月の採択では、県教育委員会による県立学校の扶桑社版歴史教科書採用に続き、今治市と越智郡上島町の教育委員会でも、2010年度から管内の公立中学校で扶桑社版の歴史および公民教科書を採用することを決めた[11][12]。
知事退任後
編集2011年度より大阪国際大学客員教授を務めた。2012年、秋の叙勲において旭日重光章を受章。2013年1月から2015年10月まで教育再生実行会議委員を務めた。
発言
編集飲酒運転で摘発された県議
編集2004年1月18日、愛媛県松山南警察署が行った飲酒検問で西条市選出の渡部浩自民党県議が飲酒運転の現行犯で逮捕された。議会からは「自発的な辞職を求めるべきだ」との声が上がったが、知事は22日の会見で「適切ではなく、大変残念だ」と表明しながら、議会が求めている議員辞職については「県議としての活動が継続出来なくなるような重大な事態とまでは思っていない。進退は御本人が判断されること」とコメントした。
加計学園問題
編集「ゆがめられた行政が正された」「報道しない自由」
編集前愛媛県知事として、今治市の特区申請に関して役所への事前相談を行っていたことから[15]、2017年7月10日、24-25日の閉会中審査に呼ばれ、加計学園問題に関する答弁を行った。その際一部メディアにしか報道されず、報道しない自由が行使されたと批判している[16]。
- 2017年7月10日の閉会中審査では「愛媛県にとっては、12年間加計ありきだった。今さら1、2年の間で加計ありきじゃない」、「10年間、我慢させられてきた岩盤規制にドリルで穴を開けていただいた。『ゆがめられてきた行政が正された』というのが正しい発言ではないか」などと述べる[16]。この発言を朝日新聞と毎日新聞は報じなかった[16][17]。
- 2017年7月24日閉会中審査では「安倍首相にかけられた、あらぬ濡れ衣を晴らす役に立ちたい」と発言[18]。夕刊フジは、この発言を朝日新聞と毎日新聞は報じなかったとしている[19]。
- 7月25日の閉会中審査で、青山繁晴が7月10日の閉会中審査の報道について、「加戸参考人が経緯を含めて、とても分かりやすくお話しいただいたが、ほとんど報道されなかった。ちなみに、僕という国会議員は、この世にいないかのような扱いになっていたが、それは、有権者には申し訳ないけど、はっきり言ってどうでもよいこと。問題は、当事者の前川参考人と並んで、一方の当事者の加戸参考人が、まるでいなかったがごとく扱われたということ」とメディアを批判。加戸に「今回のメディアの様子を含めて、社会の様子を、どのようにお考えか」と質問、加戸は「私も霞が関で30数年生活し、私の知る限り今まで、メディア批判をして勝った官僚、政治家は誰一人いないだろうと思っているし、ここで何を申し上げてもせんないことかなと感じている」[20]、「報道しない自由があるのも有力な手段、印象操作も有力な手段。マスコミ自体が謙虚に受け止めていただくしかない」と発言している[21][注 1]。J-CASTによると、この発言を紙面で報じたのは毎日新聞のみ、産経新聞はウェブサイトのみ、朝日新聞と読売新聞は報じなかった[20]。
- 同日の閉会中審査で、加戸が取材時にテレビ局に見せられた前川のインタビュー映像で、加戸が第2次安倍内閣で教育再生実行会議の委員になった理由を、前川が「あれは安倍首相が加戸さんに加計学園の獣医学部の設置を会議で発言してもらうために頼んだんですよ」と述べた映像を見たため、その場で記者に否定し「安倍首相が加戸氏に頼んだ」という部分は全国放送されなかったと主張している[22]。加戸は「(前川氏は)安倍首相をたたくために、全国に流れるテレビの取材に応じた。私の取材ができていなければ、流れていたかもしれない」とし、「なぜ虚構の話をするのか。作り話をしなければならない彼の心情が理解できない」と前川を批判している[22][21][23][注 2]。産経新聞によると、この発言を朝日新聞は一切報じず、直後に前川が答弁した「誤解だ。『総理に頼まれてその発言をした』と言った覚えはない[22]」という発言のみを報じた[25]。
「NHKは朝日や毎日よりも偏向がひどい」
編集加計学園問題の報道について、会長が代わってからのNHKの報道姿勢は朝日新聞や毎日新聞よりも偏向がひどく、TBSと変わらないほどだと批判している[26]。
TBSなどが、前川喜平によるものとされる「安倍晋三首相が加戸に教育再生会議の委員を頼んで獣医学部の話をした」という証言[注 3]を報じた後、加戸はNHKのインタビューを受け「加戸さんは頼まれて、教育再生会議で獣医学部の話をしたんですか」と聞かれたという[26]。加戸は否定したが、NHKはその後も同じ質問を繰り返し、結局4回も同じことを聞かれその度に否定することになったと述べている[26]。加戸は、このインタビュー内容が一切報じられなかったしてNHKを非難し、産経新聞は、NHKは自分の主張に沿わない意見を述べた加戸氏の発言を封殺したのではないか」と疑問を呈している[26]。
鹿野川ダム誤認発言
編集2019年7月4日、第25回参議院議員通常選挙の愛媛県選挙区に立候補したらくさぶろう(自民党新人)の出陣式にて、加戸は2017年に完成を予定していた鹿野川ダムの改造工事が旧民主党政権下で3年間凍結され、その結果、2018年7月の西日本豪雨での犠牲者などの被害を防ぐことが出来なかったと主張。その責任は当時の民主党議員で同選挙区から立候補している永江孝子(無所属新人)にあると批判した。しかし、国土交通省山鳥坂ダム工事事務所によると、実際は事業凍結されておらず、完成が遅れたのも地質上の問題であると指摘。加戸の発言は事実ではなかった。市民団体からも抗議を受けたため、らくさぶろうの選挙事務所は該当発言のブログ記事や動画のリンクを削除する措置を執った[27][28]。なお、同選挙で永江が当選し、らくさぶろうは落選した[29]。
著作
編集- 『著作権法逐条講義』著作権資料協会、1974年8月。全国書誌番号:72005537。
- 『著作権法逐条講義』(改訂版)著作権資料協会、1977年12月。全国書誌番号:78007533。
- 『著作権法逐条講義』(3訂版)著作権資料協会、1979年4月。全国書誌番号:79028386。
- 『著作権法逐条講義』(全訂版)著作権資料協会、1989年2月。全国書誌番号:89026332。
- 『著作権法逐条講義』(新版)著作権資料協会、1991年11月。全国書誌番号:92007469。
- 『著作権法逐条講義』(改訂新版)著作権資料協会、1994年10月。ISBN 9784885260018。全国書誌番号:95022775。
- 『著作権法逐条講義』(3訂新版)著作権資料協会、2000年3月。ISBN 9784885260261。全国書誌番号:20079122。
- 『著作権法逐条講義』(4訂新版)著作権資料協会、2003年6月。ISBN 9784885260407。全国書誌番号:20479746。
- 『著作権法逐条講義』(5訂新版)著作権資料協会、2006年3月。ISBN 9784885260520。全国書誌番号:21015784。
- 『著作権法逐条講義』(6訂新版)著作権資料協会、2013年8月。ISBN 9784885260735。全国書誌番号:22297577。
- 『著作権制度の課題と展望 創立25周年記念講演会』著作権資料協会〈著作権シリーズ 72〉、1985年1月。
- 『我が流儀は「加戸流」 南海放送ラジオ番組「加戸さんの今日もあなたと」より』愛媛ジャーナル、2001年12月。全国書誌番号:22804948。
- 『我が流儀は「加戸流」 南海放送ラジオ番組「加戸さんの今日もあなたと」より part2』元気えひめの会、2009年3月。全国書誌番号:21584668。
- 『我が流儀は「加戸流」 南海放送ラジオ番組「加戸さんの今日もあなたと」より part3』元気えひめの会、2009年3月。全国書誌番号:21584669。
- 『我が流儀は「加戸流」 南海放送ラジオ番組「加戸さんの今日もあなたと」より part4』元気えひめの会、2011年1月。全国書誌番号:21901402。
- 『我が流儀は「加戸流」 南海放送ラジオ番組「加戸さんの今日もあなたと」より part5』元気えひめの会、2011年1月。全国書誌番号:21901403。
- 『ふるさと愛媛に愛と心を 「加戸流県政改革」3期12年』愛媛ジャーナル、2010年12月。全国書誌番号:21877254。
- 『日本の魂―加戸守行遺稿撰』 明成社、2021年6月
編集
編集監修
編集- 『初任者研修実務ハンドブック 計画と効果的実践のために』加戸守行・牧昌見監修、第一法規出版、1988年10月。ISBN 9784474047228。全国書誌番号:89004499。
家族
編集脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ “設立20周年大会”. 日本会議. 2024年1月23日閲覧。
- ^ “加計問題のキーパーソン? 加戸前愛媛県知事の研究”. 東京新聞. (2017年7月15日) 2017年7月31日閲覧。
- ^ 石田典生(1999年)『夢のあとさき 混迷の愛媛県知事選挙の遺したもの』、127ページ
- ^ “加戸・愛媛県知事、今秋引退へ”. 読売新聞. (2010年5月26日) 2010年5月26日閲覧。
- ^ “75歳の愛媛県・加戸知事、退任を正式表明 県議会初日「最善と決断」”. 産経新聞 (msn産経ニュース). (2010年9月14日) 2010年10月25日閲覧。
- ^ “知力、体力、気力の限界…愛媛知事が退任表明”. 読売新聞. (2010年9月14日) 2010年10月25日閲覧。
- ^ 愛媛県庁 (2010年11月30日). “平成22年度11月知事定例記者会見(退任会見)の要旨について”. 2011年9月8日閲覧。
- ^ 「愛媛県教育委員会『つくる会の歴史教科書』を採択」『朝日新聞』2002年8月15日付。
- ^ 「扶桑社より東京書籍評価 愛媛県教委の審議会答申」『京都新聞』2002年8月16日付。
- ^ 『愛媛県「つくる会」採択 歴史教科書、公立2例目 養護学校一部などで』 読売新聞 東京朝刊 二面 2001年8月9日
- ^ 『「新しい歴史教科書」今治市教委が採択 来年度から中学校=愛媛』 読売新聞 大阪朝刊 愛南予 2009年8月28日
- ^ 『扶桑社の歴史教科書、上島町教委が採択=愛媛』読売新聞 大阪朝刊 愛南予 2009年8月29日
- ^ “加戸守行前知事死去”. 愛媛新聞社. 2020年3月24日閲覧。
- ^ 『官報』第239号8頁 令和2年4月27日号
- ^ “加戸守行前愛媛県知事「妨害の主役は獣医師会顧問の北村直人氏」「鳩山政権が実現に向けて検討、と表明したら、民主党内に獣医師議員連盟が…」”. 産経新聞. (2017年7月30日) 2017年8月1日閲覧。
- ^ a b c d 阿比留瑠比 (2017年7月18日). “行政がゆがめられた実例とは 朝日・毎日の紙面では“存在しなかった”加戸氏証言 論説委員兼政治部編集委員・阿比留瑠比”. 産経ニュース (産経新聞社) 2017年7月29日閲覧。
- ^ “朝日&毎日新聞は「加戸証言」どう報じる? 「加計問題」で問われるメディアの報道姿勢”. 夕刊フジ (産経新聞社). (2017年7月24日) 2017年7月29日閲覧。
- ^ “崩れた「加計ありき」 揺れる前川喜平前次官証言、論拠示せず 加戸守行前愛媛県知事は「濡れ衣晴らす」”. 産経ニュース (産経新聞社). (2017年7月24日) 2017年7月27日閲覧。
- ^ “朝日&毎日、やっと報じた加戸氏証言 両紙ともに「濡れ衣」部分は触れず”. iza (産経デジタル). (2017年7月26日) 2017年7月27日閲覧。
- ^ a b “加戸氏の「報道しない自由」「印象操作」指摘 新聞各紙ほぼ報じず”. J-CASTニュース. (2017年7月25日) 2017年7月27日閲覧。
- ^ a b “<速報>加戸守行前愛媛県知事がスバリ指摘 「前川喜平氏は想像を全部事実のように発言している。精神構造を疑う」「メディアは報道しない自由、印象操作は有力な手段」”. 産経ニュース (産経新聞社). (2017年7月25日) 2017年7月25日閲覧。
- ^ a b c d “文科省OB批判の応酬…加戸前知事と前川前次官”. 読売新聞. (2017年7月25日) 2017年7月26日閲覧。
- ^ “加戸vs前川「前川の精神構造を疑う」「加戸先輩が捏造するとは思わないから誤解だ」 文科省の先輩と後輩の対決再び”. 産経ニュース (産経新聞社). (2017年7月25日) 2017年7月25日閲覧。
- ^ 門田隆将 (2017年6月16日). “森友問題から加計問題 駄々っ子の喧嘩のような低レベルな「国会」 印象操作に興じる「新聞」はもはや社会の木鐸ではない! 作家・ジャーナリスト・門田隆将”. 産経ニュース
- ^ “加計問題 朝日「前川証言ありき」 加戸氏発言また無視”. 産経ニュース (産経新聞社). (2017年7月27日)
- ^ a b c d “加戸守行前愛媛県知事「NHKはTBS並みになってきた」「同じ質問を4回も…」意に沿わぬ回答は一切使わず「一定の方向性持って報道している」”. 産経ニュース (産経新聞社). (2017年7月30日) 2017年8月1日閲覧。
- ^ “加戸前知事が誤認発言 「鹿野川ダム改造 旧民主政権凍結」”. 愛媛新聞(2019年7月17日作成). 2019年7月23日閲覧。
- ^ “愛媛の新人、対立候補攻撃の前知事動画を削除 「誤解招く」 参院選”. 毎日新聞(2019年7月18日作成). 2019年7月23日閲覧。
- ^ “無所属の永江孝子氏が初当選…愛媛選挙区”. 読売新聞(2019年7月21日作成). 2019年7月23日閲覧。
- ^ 加戸弘二氏(医療法人弘友会会長、加戸守行前知事の兄) - 愛媛新聞(2017年2月20日)、2019年3月10日閲覧。
公職 | ||
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先代 伊賀貞雪 |
愛媛県知事 公選第14-16代:1999年 - 2010年 |
次代 中村時広 |